身分詐称で切腹に!江戸時代の武士が“ニセ息子”で挑んだ最後の賭けと悲惨な末路:2ページ目
心身ボロボロの金大夫は……。
「……新九郎殿が逐電(逃走)!?」
六左衛門の言うには、何と新九郎が養子入りを直前に逃げ出してしまったというのです。
逃げてしまった以上、もう養子に迎えるのは諦めなくてはなりません。
「いやぁ、粕谷殿。この度はまことに申し訳ない……」
「ふざけるな!今まで負担した費用まるごと、耳を揃えて返しやがれ!」
もう金大夫は怒り心頭、今にも六左衛門へ掴みかからん勢いだったことでしょう。
しかし養子の話も生活費の負担も双方合意した上のこと。六左衛門の悪意が立証できない限り、法的に責任を問うことは難しい状況です。
もはや老境に差しかかっていたであろう金大夫。これから六左衛門と訴訟を起こす気力も湧きません。
と言うより、そんな力が残っているなら、何としてでも新しい養子を見つけなければ……。
困り果てた金大夫は、浪人の林十右衛門(はやし じゅうゑもん)に声をかけて、庶子(非嫡出子)にでっち上げたのでした。
