江戸時代の物乞い大道芸人「わいわい天王」の正体とは?〜江戸の疫病除けと風俗:2ページ目
なぜ「わいわい」天王なのか?
ところで、このわいわい天王というネーミングには、どういう意味があるのか気になります。
「わいわい」とは賑わっている・騒がしい様子を表わしており、早く立ち去って欲しい人々から寄付をもらいやすくする作戦があったのでしょう。
ちなみに「わいわい」という擬音は大声で泣き叫ぶ様子を表わしていると言います。
……あかこ(赤子)のなくこゑ(泣く声)のわいわいときこゆる(聞こゆる)……
※鎌倉時代の語源辞書『名語記(みょうごき)』より。
大声が転じて賑わうなどポジティブな表現にも用いられるようになり、それが牛頭天王と合体してわいわい天王となりました。
ちなみに、わいわい天王は独特な声色を使っていたようで、この辺りも子供たちに面白がられたのかも知れません。
……わいわいのこわいろ(声色)まで、つかひおぼへて(使い覚えて)……
※咄本『千里の翅(せんりのつばさ)』より。
果たしてどんな声色だったのか、気になるところですね。
またわいわい天王は浪人の副業として行われていたようで、落ちぶれた様子や台無しになった様子も「わいわい」と言うようになりました。
……お前を半死半生にぶちのめして……仕舞ひは、わいわいに……
※歌舞伎「男伊達初買曽我(おとこだて はつがいそが)より。
……終に其金(そのかね)わいわいになりぬ……
※談義本『当世辻談義』より
子供たちが「わいわい」囃し立てるのは、すっかり落ちぶれて「わいわい」になった浪人を笑っていたのかも知れませんね。
