坂本龍馬とお龍、日本初の新婚旅行へ。寺田屋事件から霧島へ逃れた愛の18日間:2ページ目
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手紙の中で、寺田屋の一件について、こう記しています。
「龍女(たつめ)がおれバこそ、龍馬の命ハたすかりたり」
命の恩人であり、共に生きる伴侶でもあるお龍への、まっすぐな言葉でした。
霧島神宮への参拝、高千穂峰への登山、そして山頂に立つ「天の逆鉾(あまのさかほこ)」を目にしたこと――これらも手紙に添えられた絵とともに記録されており、ふたりの旅の確かな足跡がそこに残されています。
この旅は、単なる逃亡の記録ではありません。剣を握ることよりも、心を交わすことに重みを感じた若き夫婦が、ただ「ふたりで生きている」ことを確かめ合った十八日間だったのです。
指輪も、写真も、きらびやかな儀式もない。けれど、霧島の山道を歩いたその足跡こそが、何よりの証しでした。
この旅が後に、「日本で最初の新婚旅行」と呼ばれるようになります。それは歴史の隙間に咲いた、ささやかで確かな愛の記録でした。
――時代の荒波をかいくぐったふたりが、ほんのひととき見つけた、穏やかな春のような時間。そのやさしい記憶が、今も霧島の湯けむりの向こうから、そっと語りかけてくるようです。
参考
- 「所蔵品」高知県立坂本龍馬記念館 公式Webサイト
- 宮地佐一郎 編集・解説『坂本龍馬全集』(1978 光風社書店)
- 『図説 坂本龍馬』小椋克己・土居晴夫(2005 戎光祥出版)
- 『歴史を歩く〜龍馬の歩いた道〜』(2024 八重洲出版)
- 津田紀代 監修『ビジュアル選書 カメラが撮らえた幕末・明治・大正の美女』(2014 KADOKAWA)
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