酒癖の悪さがすべてを狂わせた!名将・福島正則が家宝の名槍「日本号」を失った夜【前編】
福島正則(ふくしま まさのり)は、戦国時代から江戸時代の初めにかけて活躍した武将です。豊臣秀吉のいとこという縁もあり、若いころから多くの戦で手柄を立てた勇敢な人物として知られています。
稀有な義理堅さが仇となった名将。賤ヶ岳の七本槍の一人・福島正則の生涯をたどる
豊臣政権時代の出世頭賤ヶ岳の七本槍(しずがたけのしちほんやり)の一人と呼ばれた名将・福島正則(ふくしままさのり)という人がいました。しかし彼は、豊臣秀吉の時代から徳川時代にかけて、かなり浮き沈みの…
しかし、そんな彼にはひとつ、大きな弱点がありました。それはお酒です。
正則はたいへんな酒好きで、飲むと気が大きくなり、つい羽目を外してしまうことがありました。その酒癖のせいで、彼は生涯の中で二つの大切なものを失っています。
ひとつは、家の宝ともいえる名槍「日本号(ひのもとごう/にほんごう)」。もうひとつは、信頼していた家臣の命でした。
ひとつ目の喪失――名槍「日本号」
ある日、黒田家の使者として母里友信(もり とものぶ)という武士が正則のもとを訪れました。友信は、黒田家でも一目置かれる槍の名手で、しかも大の酒豪としても知られていました。
正則は、そんな友信に大きな杯に酒を注いで勧めます。しかし、使者という立場をわきまえた友信は、はじめはきっぱりと断りました。
ところが正則は、「黒田の武士は酒にも弱いのか」と挑発します。それを聞いた友信は、「では、飲み干したらごほうびをいただきましょう」と言い返しました。
正則は「好きなものを取らせてやる」と笑ってうなずきました。
友信は、その酒を何杯も、ためらうことなく飲み干しました。そして……
2ページ目 「ごほうびとして、日本号をいただきます」
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