“松方デフレ”の衝撃――インフレから一転、明治時代の日本を襲った経済政策とは:2ページ目
銀行設立の条件
当時、銀行を設立するにはどのような条件があったのでしょう。
まず、5万円以上の資本金が必要でした。新貨条例で1円金貨の金含有量が1.5gに定められていましたから、最近の金の価格で計算すれば1円は約8,000~9,000円となります。
その計算でいくと、5万円は少なくとも4億円ということになります。
次に、5万円の6割を太政官札や新たに政府が発行した明治通宝という新紙幣で政府に納め、同額の銀行紙幣を発行しなければならないという条件がありました。
そして、紙幣を正貨に交換できるように、残りの4割は正貨である金貨で用意しておく必要がありました。
国立銀行で発行した紙幣には、例えば十円紙幣なら「此紙幣を持参の人へは何時たりとも拾円相渡可申候也」と記されていましたから、その紙幣を銀行に持参した人がいれば、いつでも10円金貨と交換しなければならなかったのです。
このように紙幣と、そこに表示されている額面の正貨を交換することを「兌換」といい、そのような紙幣が「兌換銀行券」「兌換紙幣」となるわけです。
こうすることによって紙幣の信用が高まり、誰もが安心して紙幣を受け取ることができるようになったのです。
