「べらぼう」なぜ田沼意次(渡辺謙)は徹底排除されたのか!?鍵は徳川家康の政治理念だった!【中編】:2ページ目
商業を利益を貪るだけの卑しい職業と捉える
儒教の基本理念は、「下は上を敬い、上は下を慈しむ」という「孝」の精神にあります。その一派である朱子学は、家康が定めた厳格な支配体制を全面的に肯定する学問でした。
朱子学の教えは、権力を持つ為政者にとって最良の理論であり、江戸幕府の支配体制である幕藩体制において、徳川家を頂点とする秩序の維持に最適な思想とされたのです。
また朱子学では、商業を農民が生産した物を右から左へと流して利益を貪るだけの卑しい職業と見なし、商人を「利を追い求める卑しい存在」として捉えました。
儒教の教えでは、国の根幹は農業にあり、商業や工業は農業に比べて価値が低いという考え方が根底にあったのです。
このような朱子学の影響は江戸時代を通じて確実に浸透し、農業を重んじる「重農主義」こそが優れた為政者のなすべき政治であるとされました。一方で、卑しいとされた商業を重視する「重商主義」を政治の中心に据える為政者は、武士の風上にも置けぬ者と見なされたのです。
儒教、特に朱子学は、江戸幕府の歴代将軍や為政者たちにより、神君と仰がれた家康が導入した「尊い教え」として重んじられました。したがって、この教えに背くことは、少なくとも徳川家に縁ある者にとって、許されるべき行為ではなかったのです。
