大河「べらぼう」ついに喜多川歌麿(染谷将太)爆誕!史実では謎多き歌麿の名作に潜む”母への想い”を考察【後編】:2ページ目
「お前を当代一の絵師にする」の約束を果たすときが
唐丸は「俺を助けたいみたいなこと言ってたけど、助けちゃいけねえんだよ、俺みたいなゴミは。さっさとこの世から消えちまった方がいいんだ」と捨てぜりふを吐きます。
けれども、今まで大切な人である瀬川も平賀源内も助けられなかったと悔やみ続けてきた蔦重は、「俺はお前のことを助けらんねえわ」と言いつつ、「お前が生きてえっていうならいくらでも手を貸すぞ」と手を差し伸べます。「俺の役目はお前を助ける。俺はお前を助ける」と長屋から抜け出させるのでした。
自分ができることを正直にぶつける。唐丸が姿を消してから、後悔し続け「もしまた再会することができたら」という想いを胸に秘めていた蔦重ならではの、ストレートな言葉で、ドラマのセリフではありますが、胸を打たれるものでした。「お前を当代一の絵師にする」と誓った約束を果たすときが来たのです。
〜鬼畜な実の母親vs子の想いを守る養母の差が「母の日に」〜
長屋から抜け出し、「耕書堂」にやってきた唐丸。駿河屋の女将ふじ(飯島直子)は、蔦重が唐丸が身につけていた前掛けを取り出して思い出していることを知っていたので、唐丸のために「人別」(現代の戸籍)を取り寄せます。
蔦重は「唐丸を受け入れて欲しい」と駿河屋の親父さん(高橋克実)に頼むも、そんな「身元不明な人間を受け入れるわけにはいかない」と怒られて(いつものように、蔦重は蹴飛ばされて階段落ちしてましたね)いましたが、ふじが「人別」を取り出した上に「床ドン」して親父さんを諌めます。
「重三郎の大切に想っているものなら大切にしてやりたい」という想いが伝わる、実に男前ないいシーンでした。
身寄りのない子を引き受けていた駿河屋。蔦重も養子です。当然、ふじとは血のつながりも何もないわけですが、「唐丸の実の母親」と「血のつながりのないふじ」という母親の二人の差が鮮やかに描かれていました。
鬼畜な実母と、温かい目で養子を見守ってきた養母の格差のありすぎるストーリー。
「母性がテーマ」の話を実際の「母の日」に放送するという、いい意味で森下脚本の恐ろしさを感じました。

