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大河「べらぼう」繁盛しても地獄の吉原。五代目・瀬川花魁(小芝風花)の運命を左右した3冊の本【後編】

大河「べらぼう」繁盛しても地獄の吉原。五代目・瀬川花魁(小芝風花)の運命を左右した3冊の本【後編】:3ページ目

女性用の教訓書だった『女重宝記』

『女重宝記(おんなちょうほうき)』とは、女性が日常生活に役立つ知識や身に付けておくべき教養などを、項目ごとにまとめて解説した百科事典風の書物でした。

女中万たしなみの巻・祝言の巻・懐妊の巻・諸芸の巻・女節用集字尽の巻などの五巻があり、いわば女性用の教訓書のようなものだったのです。

「この本を読めば大丈夫だ」と嬉しそうに説明する蔦重の、恐るべき鈍感力にはイライラした人が多かったでしょう。

「重三にとって、わっちは女郎なんだね……吉原に山といる救ってやりたい女郎の1人」と、表情を曇らせ声のトーンが悲しげになっていく瀬川の様子に気が付かないどころか、「そういう、いっぱいいる女郎の中でも特別に幸せになってほしい!」と、さらに絶望的な言葉を吐いてしまいます。

浮かんだ涙をこぼすまいと気丈に上を向いた瀬川は、「ばからしゅうありんす」と言いつつ受け取り「ありがとうござりんす。せいぜい読み込みいたしんす」と去っていきます。

今まで蔦重のために行動してきた瀬川の胸中を思うと、まさに胸が痛む場面でした。

瀬川が去っていった後、「あいつ怒ってたか?」と九郎狐(声:綾瀬はるか)に問いかける蔦重。あまりの鈍感さに「ば〜か!ば〜か!」と九郎狐が腹を立ててしまう始末でした。

けれども、単純に蔦重が鈍感というだけではありません。幼い頃から吉原で育った若衆は、「女性はいずれ遊女になる存在。色恋の対象として絶対に見てはならぬ」という、いわば精神的な去勢をしていく吉原のシステムの残酷さが根本にあるでしょう。

しかも、本人は自然に「洗脳」されていくので、自覚もなく瀬川の想いにもまったく気が付かない……これにも吉原の残酷さを感じます。

ずっと瀬川の心意気やきっぷのよさに甘えてきた蔦重。瀬川に惚れた鳥山検校が当時第ニュースになるほどの大金を積んで身請けされるという事実をどう捉えどう動くのでしょうか。

史実では鳥山検校に身請けされた後に検校が逮捕され、その後の人生は不明になっている瀬川。せめてドラマの中では幸せになってほしいと、毎回思わされるのでした。

 

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