大河『べらぼう』で男色家・平賀源内が愛した実在の女形・瀬川菊之丞はお江戸のインフルエンサー【前編】:2ページ目
幼い頃から女形役者を目指していた美少年
二代目瀬川菊之丞は、実在の人物です。寛保元年(1741)に生まれ、安永2年(1772)に31歳という若さで亡くなっています。
菊之丞は、江戸郊外の武州・王子の富農である清水半六の子に生まれ、幼名を徳次といいました。
5歳には、すでに享保年間に大活躍した人気の女形初代・瀬川菊之丞(通称:濱村屋路考)に養子入りして、「瀬川権次郎」を名乗っています。
その後、10歳ごろには二代目・瀬川吉次となり、江戸三座のひとつ中村座にて養父一周忌追善として『石橋(しゃっきょう/獅子を題材とするもの)』の所作を演じたのが初舞台だったそうです。
浮世絵師・石川豊信作『二代目瀬川吉次の石橋』という浮世絵では、色白で目鼻立ちの整ったふくよかな吉次が、蝶や牡丹の花を背景に獅子頭を持ち艶やかに舞う姿が描かれています。
さらに15歳ごろには、市村座の顔見世(※)で、初代・瀬川菊之丞が演じた『百千鳥娘道成寺』(ももちどりむすめどうじょうじ)を披露。
二代目・瀬川菊之丞を襲名しました。
※顔見世
歌舞伎で、1年に1回、役者の交代のあと、新規の顔ぶれで行う最初の興行のこと
3ページ目 この世のものとは思えない美しさで江戸っ子の心を鷲掴み