実は昔話「桃太郎」には、桃を食べたおばあさんが若返り桃太郎を産む ”回春型パターン”が古くから存在していた!:3ページ目
囲炉裏端の桃太郎と、絵本の中の桃太郎
桃太郎に限らず昔話は、「絵本」と「語り」のふたつの表現方法によって伝えられてきました。「絵本」の日本での始まりは室町時代に作られた御伽草子で、貴族や武家に楽しまれたものでした。庶民に広まったのは、出版技術が発達した江戸時代以降のことです。
「語り」は絵本の読み聞かせでなく、記憶した物語を、何も見ず語り聞かせることを指します。いわゆる口頭伝承であり、こちらの方が歴史は古いです。
語りで物語を伝える行為は、文字が生まれる前から行なわれてきました。昔話においては、語り手は主に祖父母で、聞き手は孫です。
たとえば農家の囲炉裏端で、おばあさんが孫に昔話を語って聞かせました。孫もまた大人になると、自身の子や孫に昔話を聞かせたのです。
そして「ふたつの桃太郎」においては、「桃から生まれた」が主に語りの桃太郎で、「おばあさんから」が主に江戸時代の絵本の桃太郎であるといえます。それが明治以降に「桃から」に統一されます。
昔話としての『桃太郎』の起源はわかりませんが、少なくとも室町時代には語られていたといわれています。庶民の間で語られたので、この時代の文献には記録されていません。『桃太郎』が文字に記録されたのは、江戸時代の絵本=草双紙からでした。これが赤本版とよばれる『桃太郎』です。
赤本には『さるかに合戦』『舌切り雀』など、昔話を題材にした作品があります。これらは作家のオリジナルでなく、すでに知られていた昔話をもとに書かれたものです。そこには時代の流行や、作家によるアレンジが加わっています。『桃太郎』も同様です。