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調子に乗るな!未亡人となった紫式部があわれな勘違い男を瞬殺【光る君へ】

調子に乗るな!未亡人となった紫式部があわれな勘違い男を瞬殺【光る君へ】:2ページ目

勘違いしないで!あわれ男は瞬殺

折々に 掛くとは見えて ささがに(篠蟹=蜘蛛)の
如何に思へば 絶ゆるなるらん

【意訳】今までおりに触れて巣をかけていた蜘蛛が、巣をかけなくなってしまったのはどういうことでしょうか?

【本音】よく返事を書いてくれた貴女が返事を書いてくれなくなったのは何故ですか?

……そういうとこやぞ。紫式部のうんざり感は一層増したことでしょう。

仮にも女性を蜘蛛に喩えるとは言語道断。恐らく巣をかけて飛んでくる獲物=男を待ち構えているんだろ、とでも言いたかったのでしょう。

夫が亡くなってまだ喪も明けていないのに……筆先に含む墨すら重たく感じる中、9月晦日(つごもり。末日)になって何とか返歌を寄越したのでした。

霜枯れの 浅茅(あさじ)に紛(まご)ふ 篠蟹の
如何なる折に 掛くと見ゆらん

【意訳】霜の降りた枯れ草に住む蜘蛛が、どういう時に巣をかけるか、分かりますか?

【本音】数回文通したくらいで、調子に乗らないで下さい。あなたに手紙を書くなんて、暇つぶし程度にしかなりませんから。

……人を蜘蛛に喩えた仕返しです。安っぽい慰めなど無用、俗物と一緒にいても煩わしいだけではありませんか。

(紫式部の寄り添った宣孝が高尚な聖人君子かと言われれば微妙ですが……)
かくして男は瞬殺されてしまったということです。

終わりに

(九一)
たまさかに返りごとしたりけり(る)人、後にまたも書かざりけるに、お(を)とこ
お(を)りおりに かくとは見えて ささがにの
いかに思へば 絶ゆるなるらん

(九二)
返し、九月つごもりになりにけり。
霜枯れの 浅茅にまがふ ささがにの
いかなるお(を)りに かくと見ゆらん

今回は『紫式部集』より、下心むき出し男が紫式部に瞬殺されるエピソードを紹介しました。

他にも紫式部に言い寄る男たちはいたようですが、いずれも成就することなく返り討ち?に遭っています。

果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、こうしたやりとりは描かれるのでしょうか。今から楽しみですね!

※参考文献:

  • 南波浩 校註『紫式部集 付 大弐三位集・藤原惟規集』岩波文庫、2024年2月
 

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