虚構だ!『源氏物語』を読んではならぬ…煩悩の嘘を書いた罪で、紫式部は地獄に堕ちてしまった?【後編】:2ページ目
源氏物語と紫式部を供養する「源氏供養」
壮大なスケールの作り話である「源氏物語」は罪深く、それを書いた紫式部もけしからんので、地獄で苦しんでいるに違いない……そんな背景から生まれたのが「源氏供養」でした。
源氏供養を題材として、紫式部の救済の思いを込めた「能」の作品も誕生しています。
「源氏供養」のあらすじ
安居院法印(聖覚)一行が信仰する石山観音に訪れたときのこと。
ふと背後から呼びかける女性が現れる。
女性は「自分はかつて、石山寺に籠って源氏物語を書き上げたもの。けれども、物語の供養をしていなかったために成仏できずにいる。どうか供養して救って欲しい」と伝えて、夕陽の光の中へ消えていく。
女性の望むままに、源氏物語の供養をして紫式部の菩提を弔う法印。
そこに紫式部の幽霊が現れ、感謝をしてお布施を申し出るので、法印は布施の代わりに舞を所望する。
紫式部は「美辞麗句の罪にまみれた自分を、西方浄土へと救ってほしい」と願いつつ舞い、源氏物語への供養を果たして生まれ変われるといい消えていく。
この紫式部こそ「石山観音の仮の姿」であり、源氏物語は人々に世の無常を教えるために書かれたものなのだ……という内容で終わります。