ハゲを笑うな!清少納言の父・清原元輔がハゲを笑われた時の徹底的な反論ぶりがアッパレ【光る君へ】:2ページ目
「物事は全体を見て判断せよ」元輔かく語りき
「そなたら、何も考えずにハゲを笑っておるが、それは思慮ある振る舞いとは言えないぞ……」
元輔がハゲ頭にも構うことなく熱弁を奮います。変な言い訳は恥の上塗りにもなりそうですが……。
「よいか。思慮深い人間であってもつまづいて転ぶことは少なくない。まして馬なら尚更であろう」
「と言って、馬を笑うべきであろうか。馬も悪気があって転んだ訳ではないのに、それはあまりに気の毒というものだ」
「また、よく見れば道も整備が悪くデコボコではないか。管理不行き届きについて、役人をわらうべきであろうか。いや、それもお門違いというものだ」
「そしてわしの頭から冠が滑り落ちたことについてだが、冠はあご紐ではなく髪で固定するものであるから、髪が少なくて落ちてしまうのは仕方なかろう」
「髪が少ないのは自然のなりゆきであり、わしの行いが悪かったからではない。よってわしのハゲ頭を笑うのは、見当はずれと言わざるを得まい」
「そもそも落馬によって冠が脱げ落ちてしまった事例は過去にもあり、やんごとなき方々も……」
何だかよく分かりませんが、まぁそんなことを滔々と述べたものですから、人々は呆気にとられてしまいました。
「と、このように、物事は全体を見て判断せねばならんのだ。わしのハゲを笑った者は、そのことが分かっておらぬ。よくよく反省するように!」
「「「……はぁ」」」
こうして元輔は言うだけ言い張ってから、悠然と冠を直したと言うことです。
終わりに
以上『今昔物語集』より、清原元輔の落馬エピソードをざっくり紹介しました。
「しっかり諭しておかんと、あやつらはいつまでも笑っておるだろうからな」
笑われたら、徹底的に反論する。さすが清少納言の父と言ったところでしょうか。
果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、このエピソードは再現されるのかどうか、楽しみにしています。
※参考文献:
- 馬淵和夫ら校註『日本古典文学全集 今昔物語集 四』小学館、1976年1月
トップ画像 右:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより