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命を軽んじるのは愚か!命がけで主君を守る家臣に恩賞を与えなかった徳川家康。その理由は?

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「よいか。確かに身を挺して主君を守らんとする振る舞いは立派である。しかしながら刀を持っている者に素手で立ち向かうのは危険極まりない。もし此度の振る舞いを評価すれば、今後真似をして命を落とす者が出てしまうやも知れぬ。ゆえにかの者へ恩賞を与えなかったのだ」

……とのことでした。主君を守る時に命を惜しんではならないが、軽々に命を捨てることがあってはならないし、まして死ぬこと自体が美談となっては言語道断。

家康の考えを知って、家臣たちは敬服したということです。

終わりに

……ある時近臣の内に発狂せしものありて、御前にて同僚を切かけしに。徒手にて立むかひ。額に疵うけながら捕おさへたり。上意にけなげなるふるまひなれど。白刃もちしものに徒手にてむかふは危き事なり。かゝる者をほめつかはせば。後にあやまりて死するもの多からんとて。賞典にはをよばざりき。
大猷院殿鷹狩の折。徒士の水に飛入りて。鷹の雁とらへしを賞せられざりしも。かゝる尊意を追せ給ひてならむ。(武備睫。)……

※『東照宮御実紀附録』巻二十五

その後、徳川家光(大猷院)の時代にも鷹狩りで雁を捕らえるために水へ飛び込んだ者がいたそうで、彼もまた評価されなかったと言います。

主君のお役に立つのは大事ですが、その後も続くお役目のため、何より命を大切にするよう教えられたそうです。

死ぬべき時に命を惜しむのは腰抜け。しかし死ななくてよい時に命を軽んじるのは愚か者。こうした匙加減が、武士の心得として求められたのでした。

※参考文献:

  • 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション
 

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