絶体絶命!丸裸で襲撃された剣豪は、いかに刺客を倒したか?江戸時代の武士心得集『志塵通』より:2ページ目
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そこでやむなく瞬時の判断で、自分の左手首をつかみながら、左腕で刺客の刀を受け止めたのだ。
当然、左腕は切断された。普通ならここでおしまいだが、剣豪は諦めなかった。切断された自分の左腕を棍棒のように握りしめ、刺客を殴り倒した。
刺客も剣豪の左腕を切り落とし、多量の出血にいささか動揺したのか、隙を生じてしまったのであろう。
まさに当意即妙、達人ならではの即断と言えよう……。
終わりに
かくして剣豪は左腕を失いながらも窮地を切り抜けたのでした。
自分の腕と生命なら、迷わず生命を選ぶべきと理屈では解ります。しかしそれがイコール腕を捨てるとなると、なかなか瞬時に決断するのは難しいものです。
こうした合理性を徹底的に突き詰めるのが戦場で生き延びる鉄則、まさしく武士の心得と言えるでしょう。
ところで水を差すようで恐縮ですが、入浴時には用心のため木刀など持っておくのがおすすめです。
もちろん何もない中で敵を倒したのは凄いのですが、それだけの腕前を持っているなら寸鉄はもちろんのこと、棒切れ一本あるだけで左腕を失わずに済んだかも知れません。
いついかなる時も備えを怠らず、どんな状況下でも最後まで諦めない姿勢は、現代の私たちも見習いたいものです。
※参考文献:
- 氏家幹人『武士マニュアル』メディアファクトリー新書、2012年4月
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