身内よりも優れた者を。私情を排して公正無私に努めた平岩親吉(演:岡部大)のエピソード【どうする家康】:2ページ目
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「七之助(親吉)よ……両名につき、いかがする」
徳川の宿老として家康から諮問を受けた親吉は、澱みなく答申しました。
「小平太は身分卑しき若輩者といえども才能も勇気もあり、やがて御屋形様のお役に立てる逸材です。一方、我が弟の平右衛門は斬りつけられて避けられぬほどの不覚者であり、役にも立たぬ無駄飯食いにござる」
となれば身内の恥を始末するべく、親吉は平右衛門を出仕停止の上、館へ押し込めてしまいます。
「小平太(康政)よ。きっと愚弟から心無いことを言われて腹が立ったことと思う。どうか気を悪くせず、今後とも忠義に励んでもらいたい」
「有難き仕合せにございます」
以来、親吉は何かにつけて康政を引き立てて出世させ、人々はその公正無私な態度を褒めたたえたと言うことです。
終わりに
親吉、弟を平右衛門と曰ふ、榊原小平太康政と相論し、平右衛門少し疵を受けし所に、傍らの者馳付て引分る、是時親吉は徳川家の宿老たり。康政は小身にて若年なり、親吉此事を聞き、康政今小身と雖も、才智勇敢にして、上の御用に立べき人傑なり、我弟は人に斬らるヽ程の者故、君の御用に立たず、空く禄を費す者なりと言て、武道を止めさせて押込め、偖康政をば頻りに執成し、昇進さすれば、果たして天下の英傑と称美せられたり。人皆親吉が私なきに服せり。
※『名将言行録』巻之五十三○平岩親吉
以上、平岩親吉のエピソードを紹介してきました。こうして見ると簡単なようですが、いざ自分の立場に置き換えるとなかなか実践できないものです。
偖(さて)、令和5年(2023年)NHK大河ドラマ「どうする家康」では岡部大さんが演じる平岩親吉がどんな魅力を引き出してくれるのか、今からとても楽しみにしています。
※参考文献:
- 岡谷繁実『名将言行録 (七)』岩波文庫、1944年8月
トップ画像: 大河ドラマ「どうする家康」 公式サイトより
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