俺たちの泰時、和田合戦の恩賞を辞退!北条泰時の真意に源実朝はじめ一同感激【鎌倉殿の13人】:2ページ目
仕方なく泰時が話すところによると、
「此度の戦さ、和田殿は鎌倉殿に弓引いた訳ではなく、敵はあくまで父上(北条義時)でした。それがしはあくまで父を守るために戦っただけですが、他の御家人は(父でもない≒本来守ってやる義理もない義時を守るため)数多く討死しました。だから、それがしの返上した恩賞は討死した者の遺族にあてて下さい」
なるほど、それはもっともだ……感心した実朝ですが、そんな泰時だからこそ何もなしとは忍びないもの。
「そなたの思いはよく解った。遺族には手厚い補償を約束しよう。だが、そなたに与えた分についてはどうか我が厚意として受け取って欲しい。お願いだ」
「鎌倉殿の仰せとあらば、改めて有難く頂戴いたしまする」
同僚たちへの配慮を忘れない「俺たちの泰時」と、そんな泰時の思いに報いる実朝。素晴らしい主従の絆を誰もが賞賛したということです。
めでたしめでたし。
終わりに・義時への強烈な皮肉
……屬晩景。修理亮〔泰時〕被參御所。是去五日被預勳功賞。而稱有存案。件御下文属於廣元朝臣。被上表之間。將軍家等巡賞也。不可辞申之旨雖被仰下。固辞及再三。仍令恠其意趣御之處。于時匠作被申云。義盛於上不挿逆心。只爲阿黨相州。起謀叛之時。防戰之間。無其寄之。御家人多夭亡。然者以此所。可被充行彼勳功之不足歟。下官依攻撃父敵。強非可蒙賞云々。世以莫不感歎之。然而重所被仰也。
※『吾妻鏡』建暦三年(1213)5月8日条
以上、泰時の恩賞返上(未遂)エピソードを紹介しました。さすがは「俺たちの泰時」……大いに株を上げた一方、義時に対する強烈な皮肉でもあります。
「和田が兵を挙げた(謀叛した)のは父上のえげつない挑発が原因であり、本来しなくてすんだ戦いで、多くの者が討死したのだ」
言外にそんなメッセージを含んだ今回のパフォーマンス。実朝のリアクションも織り込み済みで行ったとしたら、泰時もなかなかの策士ですね。
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では見事にすっ飛ばされてしまいましたが、ぐぬぬ……となる義時もちょっと見てみたかったと思います。
※参考文献:
- 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡7 頼家と実朝』吉川弘文館、2009年11月