エンタメ作品でおなじみ忍者の「手裏剣」は武器ではなかった!?そのさまざまな用法をご紹介:2ページ目
まるでマンガ!さまざまな使い方
先に挙げた留手裏剣の3種類について説明すると、まず「忍手裏剣」は忍者が手裏剣を打って敵を足止めするもの。私たちがすぐに思い浮かべる、あの手裏剣シュッシュッという技ですね。
次に「静定剣」は手裏剣ではなく、短刀などの刃物を投擲することです。
また「乱定剣」は茶わんややかん、砂や灰など、身の回りの物を投げつけて危機を脱する手裏剣術です。
物品を投げつけて逃げるなんて、やぶれかぶれの行動のようですが、実は戦闘術の一種として位置づけられていたのです。
私たちが想像する手裏剣とは全然違いますが、いずれにしても「敵を振り切る」ことが目的になっているのがわかりますね。
さらに、手裏剣は防弾チョッキのように使われてもいました。基本的に手裏剣は袋に入れて腰にさげて携帯しましたが、数枚は胸に忍ばせて防弾や防刃にしていたのです。
懐に忍ばせておいた金属によって敵の攻撃を防ぐなんて、まさにマンガですね。
もちろん武器として使用することもあります。そのような手裏剣術は責手裏剣(せめしゅりけん)と呼ばれ、手裏剣自体にも殺傷力を増す工夫が施されました。
たとえば松明や火薬を使用した火勢剣(かせいけん)、目つぶしや眠り薬などで相手の無力化を狙う薬剣(やくけん)、毒を使う毒剣(どくけん)があります。
中でも毒剣は手裏剣の刃に毒を塗って敵の命を仕留めるもので、暗殺目的で使用されていました。
使われた毒は、トリカブトなどの猛毒のほかに、不衛生な糞尿を塗って敵に破傷風を負わせることもあったようです。
どれをとってもマンガのような使い方ですが、昔の人も考えることは同じだったのでしょう。
棒手裏剣の難しさ
手裏剣の形にもさまざまなものがあります。手裏剣と聞いてよく思い出される平べったい形のものを平型手裏剣といい、棒状のものを棒手裏剣といいます。
平型手裏剣は手裏剣に回転をかけやすく、初心者でも投擲しやすいというメリットがあります。一方、短刀に比べるとはるかに軽量化された武器であるとはいえ、鉄の塊なので重さがあり、何枚も携帯すると任務に支障をきたすというデメリットがありました。
そこで、さらに携帯性を高めたものが棒手裏剣です。
棒手裏剣は鉄の棒の先端を尖らせた形状になっています。細く軽くなったことで何本も携帯することができ、殺傷力も上がりました。
また、投擲の際に風を切る音も少なくなったため、相手に使用を悟られないという利点があったようです。
しかし、棒手裏剣は平型手裏剣に比べると投擲が難しく、狙った箇所に打ち込めるようになるには鍛練が必要でした。
私たちがエンタテインメント作品で慣れ親しんできた手裏剣ですが、使用に際してはかなりの試行錯誤があったんですね。
参考資料