美しき女武者・巴御前が愛する人々と別離の悲しみを詠んだ和歌がこちら【鎌倉殿の13人】:2ページ目
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幻よ、夢よと変わる世の中に……
満ボろしよ(幻よ)
夢よとかはる(夢よと変わる)
世の中尓(世の中に)
奈ど涙しも(など涙しも)
津きせざるらん(尽きせざるらん)※『英雄百首』巴女
【意訳】やれ幻だ、夢だと移り変わる世の無常など、百も承知のはずなのに。なぜこうも別れの涙が尽きないのでしょうか。
生者必滅会者定離(しょうじゃひつめつ えしゃじょうり)。生まれた者は必ず死に、会った者とはいつか別れる世の定め。
それが遅いか早いかだけで、いちいち悲しむ必要などない……と理屈では知りながら、いざその場に臨めば涙が止まらないのが人情というもの。
愛する者たちの菩提を弔うため、巴御前は和田一族の滅亡後に越中国礪波郡(現:富山県南砺市)へ移住。かつて義仲の郎党であった石黒氏に身を寄せ、91歳で天寿を全うしたと言われます。
終わりに
……先だちし人ゞの不運を悲涙して無常を観じ古の歌を詠じ尼と奈りて越中の国にて庵室をむすびてタるに人ゞのボだいをいのり九十一歳にて臨終めでたくおうじやうせしと可や
※『英雄百首』巴女
【意訳】先だった義仲たちの不運を悲しんだ巴御前は、世の無常をかんじてこの和歌を詠みました。出家した巴御前は越中国に庵を結んでその菩提を弔い、91歳で安らかに往生したとのこと。
昔より めぐミ久しき 神垣に
かけて叶はぬ 願ひやはある※『英雄百首』木曽左馬数多義仲
【意訳】昔からお恵み深い神様に真心をこめてお祈りすれば、叶わぬ願いなどあろうものか。
先立った者たちの幸せを願う巴御前の真心は、必ずや神仏もお聞き届けになったことかと思います。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも和田義盛と結ばれた巴御前は、とうぜん義盛たちの最期にも接することとなるはず。
果たして彼女がどんな形でフェイドアウトしていくのか、今後見どころの一つとなることでしょう。
※参考文献:
- 緑亭川柳 編『英雄百首』山口屋藤兵衛、1844年(国立国会図書館デジタルコレクション)
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