「鎌倉殿の13人」頼朝の弟・義円が挑んだ墨俣川の合戦…第11回放送「許されざる嘘」予習:3ページ目
狙うは大手柄!単騎で敵中へ殴り込むが……
「いよいよ初陣……緊張するわい」
「大丈夫、この叔父がついておる。あまり功にはやって無理をするでないぞ?」
「はい。ここで武勲を立てて、鎌倉の兄上にお喜び頂かねば、お見送り下さった法親王殿下に合わせる顔がありませぬ!」
ダメだこりゃ、ぜんぜん聞いてない……まぁ問題なかろう。何せ敵は水鳥の羽音に恐れおののいて逃げ出すような連中じゃからのぅ……。
「よぅし。今若の兄者(全成)に牛若(義経)……見てろよ~!」
もう興奮しまくっている義円に、端っから敵をナメ切っている行家……これでは勝てる戦さも勝てません。
果たして手柄を焦った義円は単騎で敵陣へ夜襲をしかけました。しかし、平家の軍勢はもう水鳥の羽音くらいで慌てるようなことはありませんでした。
「飛んで火に入る、夏の虫とはまさにこのこと……者ども、とり囲め!」
「しまった!」
義円は夜襲を警戒していた平家の軍勢に完全包囲されてしまい、高橋左衛門尉盛綱(たかはし さゑもんのじょうもりつな)に討ち取られてしまいます。
「馬鹿め……見くびるのも大概にせぇ!」
富士川の汚名を返上しようと平家の軍勢は士気旺盛、片や行家の軍勢は数こそ揃っていても、緒戦は勝ち馬に乗りたがるばかりの寄せ集め。
かくして行家の軍勢は散々に打ち破られ、参陣していた源重光(しげみつ)・源頼元(よりもと)・源頼康(よりやす)ら源氏一門の諸将をあたら喪うこととなったのでした。
命からがら逃げのびた行家は今さら頼朝の元へは戻れず、木曾義仲(演:青木崇高)の元へ転がり込みます。
終わりに
以上、義円の生い立ちと墨俣川の戦い(治承5・1181年3月10日)における最期をざっくり紹介してきました。
数万とも言われる平家の軍勢にたった一人で殴り込む度胸と、恐らくそれを裏づけたであろう武勇を備えていた若き英雄の死は、今なお人々に惜しまれています。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では頼朝や兄弟たちと再会できるようですが、この短い期間でどのような活躍を描いてくれるのか……三谷幸喜の脚本に期待ですね!
※参考文献:
- 川合康『日本中世の歴史3 源平の内乱と公武政権』吉川弘文館、2009年11月
- 元木泰雄『敗者の日本史5 治承・寿永の内乱と平氏』吉川弘文館、2013年3月
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月