北斎先生の観察眼に注目!葛飾北斎や弟子が描いた桜や四季の花々の作品約100点を展観「企画展 北斎花らんまん」:2ページ目
1章 春の到来 早春の花々
厳しい冬が過ぎ、植物が芽吹く頃に咲き出す花々は、おめでたいものの象徴として喜ばれました。1章では、辛夷(こぶし)や梅、木蓮など、春の訪れを告げ、人々に喜びをもたらす早春の花々が描かれた作品をご紹介します。
<梅 開花時期:1月~3月>
灰を撒く花咲か爺さんの姿が描かれた作品です。花咲か爺さんといえば桜を想像しますが、本図は梅の花が描かれ、灰を撒かれた下側の枝から徐々に開花しています。画面左上には、梅の香りや春の訪れへの期待が詠まれた狂歌が添えられています。
2章 桜 花爛漫
古くから人気があった桜は、数ある花の中でもとりわけ多く、絵の題材になっています。江戸時代には、様々な花見の名所が新たに作られ、北斎の作品にも桜を楽しむ人々の様子が多く描かれています。2章では、浮世絵版画や肉筆画から、花見の名所や物語を紹介いたします。
<桜 開花時期:3月~5月>
現在の品川区北品川に位置した御殿山は、享保年間(1716~36)以降、江戸屈指の花見の名所でした。北斎の代表作「冨嶽三十六景」にも、花見シーズンの御殿山が描かれています。枝いっぱいに咲く桜は、薄い紅をぼかして摺った後に、凸凹をつけることのみで表す空摺(からずり)という技法で沢山の丸い点が施されています。
本図は浮世絵の中でも版画と異なり、絵師が絵筆で直接紙や絹に描いた肉筆画(にくひつが)です。北斎の弟子の一人・蹄斎北馬(ていさいほくば)によって描かれました。「朝妻舟」と名のつく作品に決まって描かれる柳や白拍子姿の遊女のほかに、満開の山桜が描かれています。花弁が舞い落ちる中、水面に映る遊女の顔は、目のまわりに化粧をしているようです。山桜は日本では古くから自生し、開花とともに葉をつけることで知られ、絵画にも描かれてきました。本図は花弁や葉の一枚一枚、蕾が繊細に描写されています。
3章 色とりどりの四季の花
3章では、現代の四季感に基づき、春(3月~5月)、夏(6月~8月)、秋(9月~11月)、冬(12月~2月)に区分し、季節の花々が描かれた作品をご紹介いたします。
<牡丹 開花時期:4月~6月>
「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻り」と同じ版元である西村屋与八から出版された、北斎の大判花鳥画シリーズの一図です。強い風に揺られる牡丹と蝶の一瞬が見事に描写されています。ピンク色の牡丹は、花弁の付け根から網目状に広がる花脈が精緻に描き込まれています。
<桔梗 開花時期:6月~10月>
こちらも北斎の大判花鳥画シリーズの一図です。赤みがかった色の一重の桔梗、多重咲きの桔梗、青い斑入りの桔梗の3種類が描かれてます。咲いている花のほか、まだ固く閉じている蕾、ほころぶ蕾も描かれています。桔梗の上を飛ぶトンボは、翅の脈や翅の先の黒い模様の縁紋まで細やかに描写されています。
4章 暮らしを彩る花の意匠
古くから花は意匠化され、着物や道具など、生活の中の身近なものの柄や装飾にもよく見られます。4章では、北斎と弟子が様々な花を意匠化して描いた作品をご紹介します。
<意匠化された花>
『新形小紋帳』は、北斎がデザインした小紋染の模様を収めた図案集です。このページでは、花が鶴の形にデザインされおり、それぞれ名前や説明が記されています。右上から藤の舞鶴、花椿の舞鶴(右中)、舞鶴の桜(右下)、舞鶴菊の折枝(左上)、舞鶴牡丹の折枝(左中)、水仙の舞鶴(左下)です。
春季、最初のアート鑑賞は「北斎花らんまん」で華やかにスタートしてみてはいかが?
北斎花らんまん
- 場所:東京都墨田区・すみだ北斎美術館
- 会期: 2022年3月15日(火)~5月22日(日)※前後期で一部展示替えを予定
- 前期: 3月15日(火)~4月17日(日)
- 後期: 4月19日(火)~5月22日(日)
- 休館日: 毎週月曜日 ※開館:3月21日(月・祝)、休館:3月22日(火)
- 開館時間: 9:30~17:30(入館は17:00まで)
- 観覧料: 一般 1,000円、高校生・大学生 700円、65歳以上 700円、中学生 300円、障がい者 300円、小学生以下 無料