慣れ親しんだ用語「鎖国」が教科書から消えそう!かわりの言葉「海禁」「限国」ってどういう意味?:2ページ目
「鎖国」の誤ったイメージが拡がる
明治時代になると、福沢諭吉をはじめとする啓蒙知識人が、西洋化こそが日本の進むべき道であると論じるようになります。一方、江戸時代は封建的だったことを強調するために、開国して文明開化された状態と対比する形で「鎖国」という言葉を多用しました。
そしてそれを受けて、歴史教科書にも「江戸時代は鎖国していた時代」と記されるようになったのです。
実際に江戸幕府がとっていた政策というのは、後に私たちがイメージするようになった「鎖国」とは全く違った意味合いのものでした。それは国際関係上の消極的な立場表明などではなく、むしろ国力が充実していたがゆえに、一部の国との貿易をストップさせるという方策だったのです。
「じゃあやっぱり鎖国じゃないか」という意見もありそうですが、理由があって一部の国との貿易をストップさせるというやり方は現代でも行われていることです。それをもって、その国は鎖国している、という人はいません。
当時の日本が「鎖国」という政策をとっていたというなら、それは逆説的に鎖国政策という形で「開国」していたと言うべきでしょう。当時の権力者たちも、ちゃんと世界情勢のことは知っていました。
幕末期の日本が舞台のドラマで、よく、日本はずっと鎖国しているから庶民は外国についての知識が全くなかったかのような描写がなされることがあります。あれもだいぶ脚色が入っていると思われ、当時の庶民も、日本の外にも多くの国が存在していることは知っていました。
もちろん当時の庶民が、外国についての正しい知識を持っていたかどうかは別の話です。現代に比べればそういった情報は極端に少なかったでしょうし、現代の私たちを見れば明らかなように、情報が多いからと言って正しい知識を身に付けられるとも限らないのです。
そろそろ教科書からも消えるかも?
そんなこんなで、現在では「鎖国」という言葉はもう使わないで、別の言葉を採用しようという動きも出ています。
その一つに「海禁(かいきん)」というものがあります。これは中国が「明」「清」だった頃に、一般人の私的な海外渡航や海上貿易を禁止した政策の呼称で、当時の学者や江戸幕府の文書でも確認できる用語です。
また、国際交流は完全に閉ざしていないが限定されていたという意味で「限国」という言葉も提案されています。
「鎖国」という言葉が、教科書から消え去る日も近いのかも知れません。