愛妻に隠し事はできない…後醍醐天皇の討幕計画を洩らしてしまった土岐頼員の失態:2ページ目
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「……分かったよ、本当のことを話すよ……」
しつこく問い詰められて隠し切れなくなった頼員は、後醍醐天皇らと共に進めていた討幕計画を打ち明けてしまいます。
「まぁ、そんな大それたことを……!」
「絶対に言うなよ!そなたにだからこそ打ち明けたのだから……」
と言われて、言わない人がいるものでしょうか。このまま黙っていたら夫が危ない……妻はさっそく六波羅探題で奉行人を務める父・斎藤利行(さいとう としゆき)に謀叛の計画を伝えました。
「どうか、どうか夫だけはお見逃し下さいまし!」
「よう知らせてくれた、これで主上(天皇陛下)を唆す賊どもを一網打尽ぞ!」
果たしてその夜の内に謀叛人らを襲撃、討幕計画はあえなく阻止されてしまったのでした。
終わりに
妻の情報提供に免じて許されたのか、頼員が処刑・処罰された様子はないものの、その後表立った記録がないことから、もしかすると皆に合わせる顔がなかったのかも知れません。
「……あなたが生きていてくれただけで十分。私は、これでよかったと思います」
しかし、後に鎌倉幕府が滅亡して後醍醐天皇による建武の新政が行われると、頼員たちは(生きていたとしたら)冷遇の憂き目を見たことでしょう。
それでも妻の愛情が変わらなかったことを、切に願うばかりです。
※参考文献:
- 「歴史の真相」研究会『おもしろ日本史大全』宝島社、2021年10月
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