尊すぎる言霊の力…『万葉集』が伝える舒明天皇(じょめいてんのう)の御製に込められた願い:2ページ目
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たとえ辛い現実の中でも……。
あるいは、実際にそんな素晴らしい光景なんて、広がっていなかったのかも知れません。
現実には、美しいなんてお世辞にも言えないような見すぼらしい荒廃した風景が広がり、貧しく殺伐とした民の暮らしが転がっていたのかも知れません。
それでも希望を捨てることなく、幸せな未来を強く願って言葉に表し、国じゅう隈なく行きわたるよう、言霊の祈りを風に流していたのかも知れません。
人間は、発する言葉でできています。社会は、そこに暮らす人間でできています。
「村は住む人のほんの僅かな気持から、美しくもまづくもなるものだ」
※柳田国男「豆の葉と太陽」より
現実が辛いなんて、そんなの子供でも解ります。そんな中だからこそ希望を示し、その実現に向けて努力を重ねてこそ大人というもの。為政者であれば尚更です。
神武天皇から令和の今上陛下に至るまで、天皇陛下は常に日本の平和と国民の幸せを願い続けてきました。
そんな無私なる至誠にこそ私たち国民は権威を感じ、皇室を敬愛する気持ちをごく自然に育んできたのです。
『萬葉集』だけでなく天皇陛下の御製にはそうした思いが美しく詠まれているので、他の作品にも興味を持って欲しいと思います。
※参考文献:
- 小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小学館、2009年6月
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