明治時代、数々の政敵を葬り去った冷血漢・大久保利通の意外な一面「すべてはこのひとときのため」:2ページ目
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すべてはこのひとときのため……冷血漢の意外な一面
さて、そんな「悪役」大久保利通ですが、これが我が家の中では、少し違った顔を見せたようです。
「じゃあ、お父様は仕事に行ってくるからね」
大久保は子煩悩だったそうで、特に一人娘の芳子(よしこ)を毎朝出勤前の短い時間、抱き上げては可愛がりました。
「……お父様、煙草の匂い嫌~!(※大久保はヘビースモーカーでした)」
また、夜遅くに大久保が帰宅すると、
「「「お父様、お帰りなさ~い!」」」
男の子たちが先を争ってお出迎えにきて、大久保の靴をこれまた争うように脱がせ、時おり勢い余って後ろへ転げてしまう、なんてほほえましい光景もあったそうです。
平日は多忙な公務で帰りが遅く、家族と一緒に食事することもできませんが、土曜日の夕食はちょっと特別に家族みんなで食卓を囲みました。
(この団欒のひととき、家族の笑顔を守るためだからこそ、わしは日本の未来を切り拓くべく、鬼にも修羅にもなれようと言うものだ……)
そんな意外な一面が人々に知られていたら、大久保の末路は少し違ったものになったでしょうか……それとも「家族にばかり甘くて、天下万民には慈悲のない冷血漢だ!」と非難されたでしょうか。
いずれにしても、死んでしまえばみな仏。あの世では政敵たちとも和解し、家族みんなと団欒を楽しんで欲しいものです。
※参考文献:
- 勝田政治『政事家大久保利通』講談社、2003年7月
- 佐々木克『大久保利通』講談社学術文庫、2004年11月
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