トイレなんか行くな!戦国時代の名軍師・竹中半兵衛が我が子に施したスパルタ教育:2ページ目
戦さ場で、敵に「厠」と言えるのか?
ある時、半兵衛の軍物語(いくさものがたり)を聞いていた左京は、ふと尿意を催してしまいました。
「あの、父上……」
「何じゃ、講義中に私語をするな!」
普段の温厚で優しい父はどこへやら、鬼の形相で半兵衛が詰問します。
「厠(かわや。トイレ)へ……」
「ならぬ!」
「も、洩れそう……」
「ならばここでせぇ!」
「そんな……」
ここに小便をたれるとも、軍物語をしている大事な席を立ってはならぬ……説話集『常山紀談(じょうざんきだん)』によると、半兵衛はそのように左京を叱ったそうです。
ちなみに、軍物語とは過去の合戦について語り聞かせることですが、ただの昔話とは違いれっきとした軍学の一環で、当時の合戦における勝因/敗因を探り「自分ならどうするか」を真剣に検証する場でした。
「たわけ!軍物語を聞く時は、自分が『いま戦さ場にいる』ものと思えと教えておろう!それとも何か?そなたはいざ戦さ場において、敵に『厠に行きたいから、しばし待て』とでも頼むつもりか!」
演習を演習と思って臨んでは、いざ本番に実力が出ない。我が身の生き死にがかかっている場面で、厠もへったくれもあるものか……そんな常在戦場の精神を叩き込んだお陰で、左京もまた名将に成長して数々の武勲を立てたのでした。
終わりに
「(武略で身を立てる)竹中の子が、武道の咄(はなし)に聞き入り、座敷を汚したと言われれば、それは我が家の面目である」
※『常山紀談』より
いや、掃除をする身にもなってくれと言いたくなってしまいますが、天才は何とかと紙一重と言うように、一つ道を究めて世の役に立つ人は、中途半端な常識など度外視して突き抜けていったことがよく解ります。
でも、トイレを我慢するのは身体に悪いし、その場でしてしまうと後始末が大変なので、皆さんはちゃんとトイレに行って下さいね。
※参考文献:
池内昭一 編『竹中半兵衛のすべて』新人物往来社、1996年1月
一個人編集部『戦国武将の知略と生き様』KKベストセラーズ、2014年4月