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部下のためなら馬糞くらい…武士道バイブル『葉隠』が伝える戦国武将・甘利信忠の将器

部下のためなら馬糞くらい…武士道バイブル『葉隠』が伝える戦国武将・甘利信忠の将器:2ページ目

現代なら18歳と言えば(法律上はともかく)子供にしか見えませんが、当時は13~15歳で元服、とうに初陣を飾って数々の修羅場をくぐり抜けていてもおかしくない年齢ですから、若くして父が遺した家臣団を束ね上げる将器を備え上げていたのでしょう。

重傷を負って死にかけている家臣を前に冷静な判断を下し、馬糞の煮汁を遠回しに嫌がるのを否定することなく「馬糞を飲むくらいなら死んだ方がマシだと言う、その心意気はあっぱれである」と共感した上で「しかし、生きて主君に勝利を奉げてこそ忠臣の本懐」と説得。

さらには(普通は飲みたくない)馬糞の煮汁を「さぁ飲め」と押しつけるではなく、「自分も飲むのだから恥ではないぞ」とまずは自分が率先して飲んで見せる心遣い。

現代人を見る限り、たとえ40~50代でも、ここまでの思いやりを示せる人はなかなか見かけません。

「んっ……ぐふぉっ……ぐぶぅ……っ!」

殺菌のためとは言え、加熱することでより悪臭が強まり、むせ返る思いだったでしょうが、これも亡き父上から受け継いだ、大切な部下を守るため……必死の思いで煮汁を飲む藤蔵の姿に、みな奮い立ったことでしょう。

終わりに

部下を思ってキレイゴトなら誰でも言えます。しかし、部下のために身をもってヨゴレゴトを実践するのは、なかなか出来るものではありません。

しかし、そういう場面をこそ部下たちは見ているもので、馬糞の煮汁を飲まないまでも、みんなのために身体を張る心意気こそ、リーダーに求められていることを教えてくれるエピソードでした。

※参考文献:
古川哲史ら校訂『葉隠 下』岩波文庫、2011年6月
中村通夫ら『雑兵物語 おあむ物語 附おきく物語』岩波文庫、1943年5月

 

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