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幕末の女スパイ?尊王攘夷の志士たちを葬り去った井伊直弼の愛人・村山たかの末路【前編】

幕末の女スパイ?尊王攘夷の志士たちを葬り去った井伊直弼の愛人・村山たかの末路【前編】

我が子を抱えて出戻って……

「……名前は、常太郎(じょうたろう)です」

『たか』が抱いていたのは、生まれて間もない彼女の息子。聞けば故郷を飛び出してから京都の祇園で芸妓をしており、贔屓にしてくれた住職との間に子を授かったものの、私生児として認知されませんでした。

「そんな子は知らん!また、そなたを身請けするつもりもない!僧侶の身辺で芸妓がウロウロしておっては外聞にかかわるから、とっとと失せろ!」

「……そんな……」

腹を痛めて命がけで産んだ子を捨てる≒殺すにも忍びず、仕方なく『たか』は芸妓を辞め、我が子を抱いて故郷へ帰って来たのでした。

「私も似たような生い立ちですから、親の因果が子に巡ったのでしょうか……」

さめざめと泣く『たか』を慰めながら、養父は彦根藩士の多田源左衛門(ただ げんざゑもん)と話をつけて、常太郎をその養子とします。やがて元服して多田帯刀(たてわき)と改名するのでした。

息子の成長を頼もしく見守る一方、『たか』の方でも暮らしに変化がありました。当時、彦根城下で部屋住み暮らしをしていた井伊直弼との出逢いです。

【後編へ続く】

※参考文献:
安岡昭男 編『幕末維新大人名事典』新人物往来社、2010年5月
日本歴史学会 編『明治維新人名辞典』吉川弘文館、1981年1月
松岡英夫『安政の大獄 井伊直弼と長野主膳』中公新書、2001年3月

 

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