逃げ回る者をうまく斬首するには?江戸時代の武士道バイブル『葉隠』による介錯のコツ:2ページ目
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【野田喜左衛門】諱は能明(よしあき)。佐賀藩士・山口庄左衛門(やまぐち しょうざゑもん)の子で、野田善右衛門清常(のだ ぜんゑもんきよつね)の養子になる。元禄8年(1695年)没。
いくら日ごろ覚悟しているつもりでも、いざ切腹となるとその覚悟が揺らぎ、つい不覚をとってしまうことは誰しもありうることですが、介錯する側はそうもいきません。
介錯は一太刀で仕留めることを基本とし、これを仕損じることは大きな恥とされました。一太刀で仕留めなければ次の瞬間に反撃される(自分が殺される)可能性もあり、常在戦場(じょうざいせんじょう。常に戦場に在り)の心構えが欠けているとされたためです。
自分が死ぬのであれば動揺するのも百歩譲って仕方ありませんが、相手の動揺につられて手元が狂い、介錯し損ねるようでは武士の名折れ。
相手が動転しているのであれば、自分は一歩引いて冷静さを保ち、相手が騒ぎ疲れて我に返った瞬間を狙って斬る。いかなる状況においても合理的な判断と行動が出来てこそ、武士は一人前とされたものでした。
現代のビジネスシーンでも応用が利きそうな喜左衛門の心がけ、是非とも見習いたいものですね。
※参考文献:
古川哲史ら校訂『葉隠 中』岩波文庫、2011年6月
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