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戦国時代、殺された恋人の仇討ちをした悲劇の烈女・勝子の最期【後編】

戦国時代、殺された恋人の仇討ちをした悲劇の烈女・勝子の最期【後編】

生きていた七郎左衛門と、佐久間一族の執拗な要求

「……あの端女(はしため。身分の低い女性)、断じて許すまじ!」

怒り狂って勝子の引き渡しを求めたのは、尾張にいた七郎左衛門の兄・佐久間右兵衛尉信盛(さくま うひょうゑのじょう のぶもり)……残念ながら七郎左衛門は助かったものの、自分たちに刃向かって来たことが許せません。

一方、斎藤家としても別に匿ってやる理由もないし……と、勝子の身柄を引き渡そうとした竜興でしたが、それを察した竜興夫人によって、勝子は逃がされていました。

「さぁ、こちらへ!」

勝子が匿ったのは三河国(現:愛知県東部)の領主・大須賀五郎左衛門尉(おおすが ごろうざゑもんのじょう。康高)。見事に仇討ちを果たした勝子を大いに賞賛し、断固として守り通す旨を主君・徳川家康(とくがわ いえやす)に伝えます。

「うむ。夫への深い愛情と仇討ちを果たした堅い意志は、男子(おのこ)にも勝る立派なもの……そんな彼女を、卑怯未練の連中に引き渡しては武門の恥辱ぞ!」

しかし、勝子が三河国にいると知った佐久間一族は執拗に引き渡しを要求し、それが通らないとなると、今度は主君である織田信長(のぶなが)を通じて圧力をかけてきました。

(※)勝子の旧主(庇護者)である信勝は、この時すでに信長によって暗殺されていたものと思われます。

信長は家康の「盟友」とは言いながら、その実態は主従関係にも等しく、織田家がその気になれば、徳川家など一ひねりです。

「さぁ、返答やいかに!」

「うぅむ……」

どこまでもゲスな連中に従いたくないのはやまやまですが、ここで逆らったら、勝子一人のために一族郎党に地獄を見せることになる……。

「それでも、彼女は渡せぬ!」

いっときの保身を図って生き永らえたとて、一度信義を曲げれば心ある武士たちからは見放され、ついには哀れな末路をたどることに変わりはない……それなら、どんな地獄にでも立ち向かおうではないか。

「……五郎左(康高)よ。彼女を安全なところへ連れてゆけ。織田家には『逐電(ちくでん。失踪)した』と伝えておく」

「ははぁ」

康高が勝子の居室へ向かうと、彼女は自刃しており、遺書には「自分の存在が、大恩ある徳川家の重荷となるのは耐えられない。一撃をもって本懐を遂げた上は、夫の後を追って逝きたい」との旨が綴ってありました。

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