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デマが奪った二人の命…無実の疑いで自決に追い込まれた悲劇の皇女・稚足姫

デマが奪った二人の命…無実の疑いで自決に追い込まれた悲劇の皇女・稚足姫:2ページ目

やがて稚足姫の亡骸が発見されると、雄略天皇は「皇女が本当に潔白かどうか、確かめよ」と、その腹を裂くよう命じます(※これが日本で初めての司法解剖であるという説もあります)。

もう死んでしまったのだから、そこまでせずとも(潔白だったと信じてやればよかろうに)……と思いますが、ともあれ彼女の胎内には石が入っていました。

これではたとえ間違いがあろうと、胎児が育つことはまずあるまい……かくして潔白が証明された稚足姫ですが、時すでに遅し、失われた命は二度と戻りません。

「ところで、武彦は?」

雄略天皇が訊ねると、どうやら罪を恐れた父・廬城部連枳莒喩(きこゆ)によって武彦は既に殺されてしまったとの事(※一族に累が及ばぬよう、先手を打ってしまったのでしょう)。

「……おのれ国見、我が子の仇!」

真相を聞かされた枳莒喩は、無実の罪によって愛する息子を我が手で殺してしまった怒りと悲しみ、そして悔しさのあまり、国見の命を狙います。

「助けてくれ!」

国見は這々(ほうほう)の体で石上神宮(いそのかみじんぐう。現:奈良県天理市)へ逃げ込み、行方をくらましてしまったのでした。

なぜ国見が根も葉もないデマを流したのかは謎のままですが、その罪深さは後世の教訓として今なお伝えられています。

※参考文献:
宇治谷孟『全現代語訳 日本書紀(上)』講談社学術文庫、1988年6月
佐伯有清 編『【新装版】日本古代氏族事典』雄山閣、2015年9月

 

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