夜這い対策にはコレが一番?男性のアレを××してしまう「今昔物語集」の秘術【下】:2ページ目
死ぬ気で捕らえろ!濃霧の中から出て来たモノは……?
「それでは、私は向こう岸に渡りますが、しばらくすると霧が立ち込め、何モノかがあなた目がけて突進して来ます。それが何であろうと、決して逃げることなく捕まえて下さい」
そう言って川を渡る郡司の背中はすぐ霧に隠れ、上流から地響きがして来ます。
(来るぞ……っ!)
自分の手も見えないほどの濃霧から飛び出して来たそれは、かの八岐大蛇(ヤマタノオロチ)もかくやと思われるほどの大蛇で、さすがの道範も腰を抜かしてしまいました。
「お助け……っ!」
命からがら逃げ延びた道範の元へ、郡司が戻って来ました。霧はすっかり晴れています。
「いかがでしたかな?」
「いやぁ……お恥ずかしながら、つい逃げ出してしまいました……」
「そんな程度の覚悟では、とうてい術は身につきませんぞ?……もう一度だけチャンスをあげますから、今度こそ頑張るのですぞ」
「はぁ、面目ない……」
そして泣きのテイク2もシチュエーションは同じで、今度は濃霧の中から、ヤマトタケルを呪い殺した伊吹(いぶき)山の主もかくやとばかりの大イノシシが飛び出して来ました。
「うわぁ!……でも、これが最後のチャンス……もうどうにでもなれ!」
必死の思いで道範が飛びつくと、大イノシシが丸太に化けて、あれほど濃かった霧もすっかり晴れ渡っています。
「……これで試験は合格にございます」
拍手と共に戻って来た郡司は、勇気を絞り尽くして腰の抜けた道範を助け起こして言いました。
「残念ながら、ご所望の『男性のアレをアレする術』は身につきませぬが、他の術なら色々と教えて差し上げますぞ……まぁ、宴会の余興くらいにはなりましょう」
(あぁ……最初の大蛇も、実際はこんな丸太か何かだったんだろうな……勇気を出して飛びつけばよかった……)
ガッカリした道範でしたが、手ぶらで帰るのも何なので、郡司からさまざまな妖術を教わったのでした。