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絶体絶命!賊徒に襲撃された清少納言が裸体をさらけ出し…どうなった?【後編】

絶体絶命!賊徒に襲撃された清少納言が裸体をさらけ出し…どうなった?【後編】

「これならどうだ!」清少納言が破れかぶれに……

「さんざん手こずらせやがって!」「往生しやがれ、この生臭坊主が!」

賊徒に全方位から白刃を突きつけられた清少納言は、破れかぶれで袈裟から何から、着ているものをすべて脱ぎ捨ててしまいました。

(どうじゃ!これならば、わぬしらも、わたくしが女性であると判ろうが!)

【原文】(前略)依似法師欲殺之間、為尼之由云エントテ忽出開云云、

【意訳】(清少納言が)法師=男性に似ていたので殺されかけた時、尼=女性であると言い得なかった(どうしても信じてもらえなかった)ので、とうとう開(つび。女性器の別称)を見せたそうな……。

※忽(たちま)ちとありますが、これは「すぐに」の意ではなく「急いで(切羽詰まって)」と解釈。ちょっと疑われたからすぐに出してしまうよりも、追い詰められた末に急いで(仕方なく)出したものと見るのが自然でしょう。

「「「あなやっ!(うゎ、こいつ本当に女性だったのか!)」」」

もはや完全に開き直った老女の裸体を見せつけられた賊徒らは、蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行ったそうですが、よほどのトラウマが刻み込まれたことでしょう。

ともあれ命拾いした清少納言ですが、庇護者であった兄を喪ったため、再び糊口をしのぐ貧苦の托鉢に出たのでした。

エピローグ

……こんなエピソードが鎌倉時代の説話集『古事談(こじだん)』に残されていますが、その真偽は定かではなく、むしろ

「才能をひけらかした女性は、惨めで不幸な末路をたどるものだ、むしろそうあるべきだ、そうであって欲しい」

と言ったゴシップ的な願望の産物と言えるかも知れません。

今も昔も、有名になればそれだけ嫉妬を買うことも多く、こうした根も葉もないエピソードを創作されてしまうのも、一種の有名税と言えるでしょう。

結果として、陰で妬んでいた者たちは時代の泡沫(うたかた)と消え去った一方、どれだけ妬まれようと才能を発揮し続けた清少納言は、千年の時を越えてその作品が愛され続けています。

【完】

※参考文献:
佐竹昭広ほか編『新日本古典文学大系41 古事談 続古事談』岩波書店、2005年11月18日

 

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