まるでマンガ!江戸時代に描かれた可愛さ溢れるユルユル鳥羽絵「鳥羽絵扇の的」
浮世絵の絵師といえば葛飾北斎や歌川広重、歌川国芳など、お江戸の絵師たちの名が多く知られていますが、京都、大阪を中心とする上方でも、「上方浮世絵」として浮世絵作品が作られていました。
そして上方浮世絵の他に、上方から生まれたジャンルとして有名なのが、「鳥羽絵(とばえ)」と呼ばれるものです。
鳥羽絵とは、絵のタッチが略画体で滑稽な雰囲気をもつ戯画作品のことで、基本的に鳥羽絵に描かれた人物の目は、小さな黒目であったりただの棒線であったりと、簡略化が著しいです。現代の漫画に通じる点がとても多いのが興味深くもあります。
”鳥羽絵” という言葉自体は、平安時代の僧であり絵師でもあった鳥羽僧正(とばそうじょう)が由来。鳥羽僧正の絵もまた簡略化された画風だったことから、似たテイストの戯画を鳥羽絵と呼ぶようになりました。ちなみに鳥羽僧正は鳥獣戯画の作者のひとりとされてきましたが、現在はその可能性は低いという見方が多いようです。
今回はそんな鳥羽絵作品の中から、江戸時代の享保5(1720)年に描かれた作品「鳥羽絵扇の的」を紹介します。
どうですかこの全力で漫画チックなテイスト!
吹き出しを付ければ漫画として成立してしまいそうな、脱力系で可愛いタッチなんです。この雰囲気が鳥羽絵の特徴です。
「鳥羽絵扇の的」は作者不詳。日本画に詳しい方は、以前Japaaanでも紹介した耳鳥斎(にちょうさい / じちょうさい)の作品では?と思った人もいるかと思いますが、
どうやら違うようです。
ちなみに耳鳥斎自身は、自分の作品が鳥羽絵と一緒にされることをよく思っていなかったそうです。でも…鳥羽絵ですよね(笑)
なんとAppleが無料配信!江戸時代の絵師・耳鳥斎の作品どれもが可愛くってユルすぎてたまんないっ
話を「鳥羽絵扇の的」に戻して、本作品は大本3冊からなる墨摺りの作品で、本作が制作された同年刊の「軽筆鳥羽絵車」が順不同に入り混じった混態本か、さらに別の鳥羽絵本を含む可能性もあるとみられています。
当時の風俗習慣やうわさ、ことわざなどが戯画として描かれていて、内容はわからずとも、描かれた人物の表情を見ているだけで笑みがこぼれてしまう、ほっこり作品になっています。
「鳥羽絵扇の的」は著作権の保護期間が終了しており、国立国会図書館デジタルコレクションでも保護期間満了につき、3冊すべて無料でオンライン閲覧&ダウンロードが可能となっていますので要チェックです。
それでは「鳥羽絵扇の的」をどうぞ!