人間五十年…は昔の平均寿命じゃない?織田信長が好んだ幸若舞「敦盛」に唄われた真意とは:2ページ目
2ページ目: 1 2
下天と化天、たった一字で桁違い
ちなみに、幸若舞「敦盛」は平安時代末期の源平合戦(一ノ谷の戦い。寿永三1184年2月7日)において、平家の若武者・平敦盛(たいらの あつもり)を討った源氏方の猛将・熊谷直実(くまがいの なおざね)が世を儚んだエピソードが元ネタとなっています。
こちらでは「下天」が「化天(けてん)」となっており、化天は先ほどの六欲天の下から二番目と一段階上がった世界で、時間の感覚もよりスケールアップ。
化天での一昼夜は人間世界の800年に当たり、住民の寿命は彼らの基準で8,000歳。一応計算すると、およそ23億3,600万年も生きるそうで、もう50年なんてほんの一瞬でしょう。
確かに、そのように途方もないスケールと比べれば、自分の悩みなどちっぽけに感じられるかも知れませんね。
まとめ
「昔は『人間五十年』と言ったけど、今じゃもう人間80年、いや100年だね……」
これまでにない長寿社会を迎えた現代日本では、そのような会話が時おり聞かれます。しかし下天や化天に比べれば、夢幻に変わりなく、50年が100年に延びたところで、人の世など実に儚いものです。
とは言うものの、限りある命だからこそ、せめて一花咲かせよう……かつて桶狭間の決戦に臨んだ信長の背中からは、そんな生き方が偲ばれます。
参考文献
- 荒木繁『幸若舞3 敦盛・夜討曽我』平凡社東洋文庫、1983年1月1日
- 太田牛一(中川太古 訳)『現代語訳 信長公記』新人物文庫、2013年10月10日
- 恵谷隆戒監修『新浄土宗辞典』隆文館、1974年5月
ページ: 1 2