謎に包まれた死。幕末の美男役者・八代目 市川團十郎はなぜ32歳で自殺したのか?その1:3ページ目
團十郎の名跡へのコンプレックス
そんなゴッドファーザーのもとに生まれた8代目團十郎は、誰に似たのか7代目とは正反対の細面で色白の優男。成田屋らしい荒々しい芸風も好んでやったものの、それよりは爽やかな二枚目役や和事の似合う役者でした。
事実、幕末を代表する二枚目役、『与話情浮名横櫛』通称「切られ与三」の与三郎は彼のために作られて大当たりしたのです。よく言えば上品、悪く言えばお坊ちゃんくささが抜けなかった8代目團十郎は、自分の芸風にコンプレックスを感じていたようで、荒事の得意な父や歴代團十郎と比べられる事を嫌ったようです。