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平安最強!謎の黒づくめ集団を率いた平致経の要人警護が京都で話題に【中編】

平安最強!謎の黒づくめ集団を率いた平致経の要人警護が京都で話題に【中編】

「……げに奇異(あさま)しきわざかな」

それから十字路ごとに黒づくめの男たちが両脇の道から二人づつ現れ、無言で致経に跪くと自分の馬に跨って隊列に加わり、気づくと平安京を出るまでに明尊の護衛は総勢三十名に膨れ上がっていました。

この頃になると、最初は驚き、不気味に思っていた明尊も、すっかり安心して致経たちに信頼を寄せるようになり、道中何事もなく三井寺に到着。

そして用事を済ませると、再び京の都へ戻って行きますが、今度は逆のことが起こりました。十字路ごとに、黒づくめが二人ずつ馬を下りて致経に跪き、元来た道へと消えていきます。

そうして二人、また二人と去っていき、最後の二人が最初の十字路に差し掛かると、致経の駿馬と乗馬沓、そして下人の馬を引き取って去って行くと、そこには頼通の館を出発した時と同じ、徒歩の致経と下人がいるばかり。

まるで夢でも見ていたかのようなひとときに、明尊は「……げに奇異(あさま)しきわざかな」と吐露したそうです。

【後編に続く】

※参考文献:
菅野覚明『武士道の逆襲』講談社現代新書、2004年10月19日
福永武彦 訳『今昔物語集』ちくま文庫、1991年10月24日

 

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