音楽に隠した抵抗精神…日本の心「演歌」、実は明治時代の自由民権運動の演説歌がルーツだった!?:3ページ目
「ダイナマイト、どん!」テロをも辞さぬ壮士たちの心意気
かくして「オッペケペー節」「民権数え唄」など様々な演歌が生み出され、民意を踏みにじる藩閥政治が大いに批判される中、世直しのためとあればテロをも辞さぬ心意気を歌う者たちも現れました。
その先駆けと言われる「ダイナマイト節」では、このように唄われています。
♪四千余万(よんせんよまん)の同胞(そなた)のためにゃ 赤い囚衣(しきせ)も苦にゃならぬ……
国利民福(こくりみんぷく)増進して民力(みんりょく)休養せ もしも成らなきゃ……ダイナマイト、どん!……♪
随分と過激な歌詞ですが、これは当時およそ四千万人の日本国民みんなを、自分の大切な「そなた」と見立てた上で、日本の未来を救うためなら、命懸けで腐った権力者を倒し、入獄や死刑だって覚悟する……そんな心意気が歌われています。
普通選挙制度など、民主主義国家としてのシステムが確立した現代では決して許されないテロですが、かつて幕末の志士たちが日本の未来を信じて命懸けで闘ったように、民権運動の闘士たちにもまた、守り抜きたい日本の理想があったのです。
ちなみに、国利民福とは庶民に対する福祉の充実によって国力増強に利することを唱えたスローガンで、まずは民間の力を養い、民権を強化して国権を支える堅固な土壌とするよう訴えたのでした。
エピローグ
やがて自由民権運動は衰頽し、いつしか演歌も政治闘争の武器から庶民の娯楽に変わっていったのですが、今日でもたまに社会問題などをテーマに熱唱しているミュージシャン?らしき方を見ると、演歌のルーツである反骨精神がいまだ息づいているように感じます。
かつて誰もが社会に対して声を上げられ、自由闊達な議論によってよりよい方向を模索して行ける日本を目指す闘争があったことを、憶えておいて頂ければと思います。
♪悔やむまいぞ 苦は楽の種 やがて自由の花が咲く……
国利民福(こくりみんぷく)増進して民力(みんりょく)休養せ もしも成らなきゃ……ダイナマイト、どん!……♪「ダイナマイト節」より。
※参考文献:
大久保慈泉『うたでつづる明治の時代世相 上―幕末から明治二十九年まで―」国書刊行会、平成九1997年8月1日