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前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【完】

前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【完】:2ページ目

姫宮さまの伝言「もし娘の幸せを願うなら……」

……さて、這々(ほうほう)の態で武蔵国までたどり着いた天皇陛下の追手たちは、さっそく衛士と姫宮さまの捜索に当たりました。

と言っても現代の大都会とは違い、当時の江戸湾沿岸地域は葦(あし)や茅(ちがや)の生い茂る半農半漁の寒村ですから人家もまばら。尋ね人を探すなど、そう難しくはありません。

果たして見つけた姫宮さまは、衛士と夫婦になって仲睦まじく暮らしており、夫の獲ってきた魚を干物に開きながら

「あら、いらしたの?」

なんて涼しい顔で出迎えられた日には、追手たちの膝も崩れ落ちる思いだったことでしょう。

「妾はもう帰りたくありません。陛下にそうお伝えなさい……『もし心から娘の幸せを願うのであれば、夫の罪を赦してたもれ』とも」

そうまで言われてしまうと、追手たちも乱暴な真似は出来ません。姫宮さまは続けます。

ここの眺めを、確かに前世で見たのです……ここは妾にとって、京の都よりも心安らぎ、幸せに暮らせる土地なのです」

「ははあ、確かにお伝え致しまする」

京の都へ戻った追手たちは天皇陛下に事の次第を報告すると、天皇陛下は涙を流して仰いました。

「あぁ……姫よ。そなたがそこまで願うのであれば、もはや連れ戻すことは諦めよう。せめて父の愛情として、姫に不自由な暮らしをさせぬよう、かの衛士に武蔵国を与えようぞ……」

かくして天皇陛下は衛士を武蔵の国司に任じて新居を建てさせ、二人はいつまでも仲睦まじく暮らしたそうです。

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