愛知の素朴な和菓子「おこしもの」とは?その味わいと謎めいた由来について
古式ゆかしい和菓子「おこしもの」
愛知県にはおこしものと呼ばれる伝統和菓子があります。
おこしものは、米粉で作った練り物です。米粉を熱湯で練り、耳たぶほどの柔らかさになったら花や鯛の木型に入れて形を作ります。
蒸し器で蒸しあげて完成で、食紅やくちなし、抹茶などで美しく色が付けられており、特に桃の節句などで食されています。
作りたては柔らかく、日が経って固くなってもお餅と同じように焼いて食べることができます。あんこなどは入っていないことが多く、お米の香りが味が生かされた一品です。
ところで、このおこしものには「おしもん」や「おこしもの」、「おしもち」といったように呼び方がいくつか存在します。
このうち「おしもん」の由来は木型に練った米粉を押して作るから押し物、「おこしもの」の由来は木型で形を起こすから起こし物、と諸説あるようです。
旧東海道筋で発展?
呼ばれ方に違いはあるものの、いずれも木型で形を作る調理工程に由来していると思われます。
このおこしものを形どる木型にもたくさん種類があります。節句や祝い事にぴったりな桃の花や梅の花の形や、鯛や蝶などの生き物、宝船や巾着などの縁起のよいモチーフも好んで使用されているようです。
おこしものがいつごろから作られるようになったのか、詳しい資料は残っていません。
しかしおこしものがよく作られているのは、愛知県内でも特に安城市や刈谷市、名古屋市内の緑区や南区、昭和区などです。
これらを地図上で見てみると、旧東海道でつながります。そのため、なんらかのきっかけでこの街道筋で作られるようになり、東海道に沿うようにしておこしものを作る文化が広まったのではないかと考えられています。
現代に残る木型のなかに、寛政7年(1795年)と年が刻まれているものがあることから、少なくとも江戸時代には作られていたと言われています。
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