どんな場所でも油断禁物!武士道バイブル『葉隠』が伝える旅先の心得を紹介
旅行の楽しみと言えば、ご当地の名物やグルメなどもさることながら、やはり旅館やホテルなどの宿泊先を挙げる方も多いのではないでしょうか。
客室に通され、荷物を下ろしてお茶など淹れると、窓からの景色に改めて「旅行に来ている」非日常感を味わえますよね。
しかし、人生何があるかわかりませんから、いざ有事(例えば火事とか災害とか)に備えて非常口や避難ルート、懐中電灯や消火器のチェックなど、入念な安全対策を忘れてはません。
かつての武士たちもそうした心構えが求められていたようで、今回は武士道バイブルとして知られる『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』から、旅先の心得について紹介したいと思います。
いざとなったらトイレから脱出!?
一五二 旅宿にては、先づ裏道、詰りゝゝ、後架等見届け、火事の時分、退場方角、心當ていたし、家の住居、壁、天井、床、戸障子、縁、疊等迄氣を附くべし。二重壁、床板取りはなしに拵へ、又は掛物の下の壁を明け、夜更けてより盗賊入り込む事あるべし。就中御本陣に心を附くべし。休み候時、跡にならざる樣に仕るべきなり。
※『葉隠聞書』第十一巻より。
【意訳】
旅先の宿に着いたら、まず裏道や行き止まり、後架(こうか。トイレ)などをよくチェックしておき、いざ火事が起きた時の避難ルートを心得ておくべきである。
また、居住区はもちろんのこと、壁や天井、床や戸に障子に縁の下、畳の一枚に一枚に至るまで入念に調べておくこと。
なぜなら、例えば壁が二重になっていたり、床板が外せるようになっていたり、あるいは掛け軸の裏に抜け穴が設けてあって、夜更けに盗賊が侵入してくることがあるからである。
中でも参勤交代などで主君がご利用あそばされる本陣(高級宿舎)のチェックには細心の注意を払わねばならないが、露骨に家捜しをしたような跡は残さないようにすべきである。
……現代でも当たり前なことも言及している一方で、当時ならではの事情をうかがわせる記述もありますね。