YOUはカメラでタイムトラベル?浮世絵の江戸名所を切り取るイタリア人写真家の展覧会、東京で開催!

松崎未來

2018年5月8日より、アダチ伝統木版画技術保存財団のショールーム(東京・目白)にて、広重の浮世絵に着想を得たイタリア人写真家の写真プロジェクトを紹介する展覧会「東京百 Homage to Hiroshige 江戸百」が始まりました。会場では、写真作品とともに広重の浮世絵(復刻版)も展示されています。展覧会初日、取材にうかがいました。

会場で報道陣を迎えてくれたのは、ミラノ生まれのハンサムな写真家、ジュゼッペ・デ・フランチェスコさん。訪日外国人にインタビューする人気テレビ番組「YOUは何しに日本へ?」で紹介され(2017年3月放送回)、ご記憶の方も多いのではないでしょうか?

ジュゼッペさんは、普段はファッション・建築の分野で活躍するカメラマンですが、広重の浮世絵シリーズ「名所江戸百景(通称:江戸百)」に魅せられてから、来日のたびに「江戸百」の面影を求めて東京の各所をめぐってシャッターを切り、「東京百」と題した写真プロジェクトを数年がかりで完成させました。

ジュゼッペさんの「東京百」のシリーズは、ただ広重の描いた名所の「ビフォア/アフター」を写真におさめているわけではありません。江戸の町で広重が感じたもの、描きたかったものが何かを、160年の歳月を経た東京で探し歩いています。

たとえばジュゼッペさんの写真では、舟の行き交う葛飾の用水路は日本橋の高速道路に、隅田川河口の遠望の富士山は東京スカイツリー(R)に置き換えられています。それは、広重作品を構成する各要素を「運輸業の発展」や「東京のランドマーク」というような意味性で解釈しているから。

そもそも広重自身も、「江戸百」の制作において、目の前の景色をそのまま描いているわけではありません。広重は、縦長の画面構図の中で風景を再構成し、配色に腐心することで、江戸の四季の風物、人々の営みを現実以上に情緒豊かに表現しています。浅草寺の雪、亀戸の梅、水道橋の鯉のぼり、芝居町の夜……場所の選定と季節(時間)の組み合わせの妙にも、広重のセンスが光ります。

絵筆とカメラという表現方法の違いはあれど、広重とジュゼッペさんが街の風景を通じて見つめているものは、160年の時空を超えて共鳴し合っているように思います。

ジュゼッペさんは広重の「江戸百」の魅力についてこう語ります。「私は建築関係のプロカメラマンとして仕事をしてきました。日本の文化が好きで、さまざまな浮世絵を見てきましたが、その中で広重の浮世絵の構図やバランス感覚には、写真家として大変興味をそそられます。「江戸百」は、季節や時間、描かれている人々のバラエティが非常に豊かで、都市の人々の生活をいきいきと描き出している素晴らしい作品だと思います。」

広重の浮世絵さながらに、ジュゼッペさんの作品は、2020年に向けて変わりゆく東京の景観を活写しています。

ちなみに今回、会場でジュゼッペさんの写真作品と一緒に展示されている浮世絵は、現代の職人が江戸時代と同じ技術で忠実に復刻したもの。とても色鮮やかで精緻です。こんな高品位のフルカラー印刷が、庶民の誰もが気軽に購入できるマスメディアとして存在した19世紀の江戸。改めて日本文化の素晴らしさを実感しますね。

広重没後160年。「江戸百」の世界に、主題と技術の両側面からアプローチする本展。短い会期ですが、ぜひ多くの方に観ていただきたいと思います。

取材・文=松崎 未來
協力=公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団

プロジェクト公式サイト:「TOKYO HYAKU 東京百

東京百 Homage to Hiroshige 江戸百~ 広重に魅了されたイタリア人写真家が撮る今の「東京」~

会期:2018年5月8日(火)〜5月20日(日)
12(土)、13(日)、19(土)、20(日)はジュゼッペさんご本人が会場にいらっしゃる予定です。
時間:10:00〜18:00(土日は17:00まで)
休館日:5月14日(月)
会場:公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団 常設展示場
東京都新宿区下落合3-13-17
電話番号:03-3951-1267
入場料:無料

 
この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了