青森県の赤飯はなぜ甘いのか?そこには「働く母の子供たちへの愛」が
甘い赤飯を食べたことある?
子供の頃、祖父の故郷である青森で初めて食べた「お菓子のような甘い赤飯」の味に、驚きを隠せませんでした。関東で生まれ育った筆者にとって、赤飯とは小豆を入れて炊き、ごま塩をかけて食べる塩味のもので、赤飯が甘いというイメージが全く湧かなかったのです。
子供だった筆者が、同じ日本でも、地域によって食文化の違いがある、ということを初めて知った体験でした。
後にインターネットで調べたところ、青森出身の人が上京していちばん驚いたのが「赤飯の味が塩味だったこと」ということで、「甘くない赤飯は赤飯ではないと思っていた」という声も聞かれました。
甘い赤飯は、青森県以外では北海道でも食べられていますが、その他の地域でも「うちの母の炊く赤飯は甘かった」という声がちらほらと聞こえてきます。
甘い赤飯のはじまりは「母の愛」から
甘い赤飯の発祥の地は、北海道札幌市。昭和23(1948)年に設立された光塩学園の設立者で初代学長の南部明子氏が、「子供たちにおいしいものを食べさせてあげたい」という気持ちから考案したものでした。
学校の経営と主婦業を両立させ、郷土料理研究家でもあった南部氏には、小豆を使った本格的な赤飯を作ることの大変さが良く分かっていました。そこで甘納豆を入れて食紅で色をつけた「簡単に作れて、甘くてピンク色の鮮やかな赤飯」を考案し、北海道各地の料理教室などで教えたところ、あっという間に北海道全域、更には東北にまで広まったということです。
忙しく働くお母さんが子供に美味しいものを食べさせてあげたいという、優しい気持から生まれたご当地グルメだったのですね。
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