無能と呼ばれた男を支えた愛。戦国時代随一のおしどり夫婦、今川氏真と早川殿の一生:3ページ目
流転の日々と晩年の平穏
小田原脱出後の氏真の消息は断片的にしか残されていません。ときには徳川家康を頼り、ときには父の敵である織田信長と交流するなど、さまざまな地、多くの人の間を渡り歩いたようです。夫婦仲は変わらず円満だったようで、早川殿は次々と子を成し、最終的には4男1女に恵まれたといいます。
晩年の詳細は不明ですが、家康に与えられた江戸品川の屋敷で、穏やかに暮らしていたとされます。
そして1613年。長年連れ添った愛妻・早川殿がこの世を去ります。その2年後に氏真も死去。享年77歳、波乱に満ちた生涯でした。
失い、奪われ、追われ……平穏とは程遠い人生を歩んだ氏真と早川殿ですが、ふたりは常にお互いを慈しみ合っていました。没後間もなくして、氏真と早川殿の対となる肖像画が遺族の意向で描かれたことからも、その様子が察せられます。
最後まで仲睦まじく、支え合いながら生きた氏真と早川殿。ふたりは死してなお離れがたいとでもいうように、今も隣あった墓で静かな眠りについています。
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