『豊臣兄弟!』なぜ秀長(仲野太賀)は奈良の商人を大和郡山へ移した? 奈良筆・奈良墨から見る大和の経済力:4ページ目
奈良墨は全国シェア9割!寺院文化から生まれたもう一つの名産
そして、筆とくれば、忘れてはいけないのが墨でしょう。
実は奈良墨は、現在も国産墨の全国シェアの約90%をしめる、奈良を代表する伝統産業なのです。
奈良墨の起源については諸説あります。一説には空海が、筆とともに墨の製法を唐から持ち帰り、興福寺二諦坊で作ったのがはじまりと伝えられています。
またしても空海かと思われますが、三筆といえば空海ということもあり、納得という気がしないでもありませんね。
また奈良県の資料では、墨作りは飛鳥時代に宮都が置かれた明日香の地ではじまったともされています。これには東漢氏(やまとのあやうじ)などの渡来人やその技術集団が深く関わっていたことは間違いなさそうです。
ともあれ、都が京都へ移った後も、奈良には数多くの寺社が残りました。そのため、写経や学問に使う墨の需要が途絶えることなく、墨作りが奈良で発展していったのでしょう。
さて奈良墨には、松脂を燃やして作る「松煙墨」に対して、菜種油などを燃やして得た煤(すす)を原料とする「油煙墨」があります。
この煤に、動物の皮や骨などを煮出して作られる液体である膠(にかわ)を混ぜ合わせて固めたものが「南都油煙墨(奈良墨)」です。
戦国時代になると、奈良墨の老舗「古梅園」の始祖とされる人松井道珍が現れます。道珍は、南都墨の名声を高め、墨作りを寺院の中だけにとどまらない民間の産業として発展させる基礎を築くのです。
奈良筆と奈良墨。前者は1977年(昭和52年)、後者は2018年(平成30年)に国の伝統的工芸品に指定されました。
日本の“書く文化”を支えてきた二つの伝統が古都奈良で育まれ、それが経済基盤として秀長の国を支えた、これはなかなか興味深い話ではないでしょうか。
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