【豊臣兄弟!】武器を“筆”に持ち替え戦に挑む!「プロジェクトX」ばり胸熱展開の第38話を史実と共に考察:3ページ目
プロジェクト「X」から生まれた「えいとくふで」
さて、チーム秀長は高品質な才蔵の筆を持ってセールスに励みます。
けれども、品質の良さは皆が認めるのですが、「奈良の商人とのつながりは断ち切れない」「お金がない」など次々と断られて八方塞がり状態に。
そこで、千宗易(利休/吉岡秀隆)が、当時の日本画のスーパースター・狩野永徳を紹介してくれました。
早速、筆を持ち込みセールスする藤堂高虎(佳久創)ですが、「この筆はだめじゃ!」と投げられてしまいます。
万事休すと思いきや、「屏風いっぱいにかすれない線をひけるほど、たっぷり墨を含む筆を作ってまいれ。そのような筆ならいくらでも買おう」。
なんと、特注のオーダーが入ったのでした。ここから、永徳が納得する筆を作るプロジェクトがスタートしました。
「えいとくふで」を成功に導いた筆ヤクの毛
実際、伝統ある奈良筆は「練り混ぜ」という技法が特徴で、羊(ヤギ)、馬、鹿、タヌキ、イタチほか十数種類の獣毛を性質に応じて組み合わせて作ります。
ドラマ内でも、家臣たちが駆け回って様々な種類の「毛」を集めていました。
けれども、筆が完成し長い紙に試し書きをするも、途中で墨はかすれてしまいます。何度も何度も作り直すも、永徳の望む筆にはならず。
もはやこれまで……という空気漂う中、皆に差し入れを届けに来た慶と末。
慶は、落ち込む才蔵に「手習所で才蔵の筆を使った子供たちの書」をみせます。
「ふでの心地よし」の書に思わず笑みを浮かべる才蔵。職人としては実に嬉しい言葉でしょう。
そして突破口となったのが、秀長の娘・末がポシェットの横にぶら下げている「毛」の飾りものでした。
天竺由来の「ヤク」の毛で作った飾りでした。「これじゃ!」と叫ぶ才蔵。
「頼む、それを譲ってくれ」というようなチーム秀長の“圧“に負け、末は飾りを差し出しました。
ヤクの毛を使用した筆は、たっぷりと墨を吸い、試し書きでは最後までかすれることなく黒々とした太い線を書き切ることに成功。
才蔵の「やった!」という声が聞こえるような、最後の筆捌きがよかったですね。
家康や信玄が格を誇り愛用した「ヤク」の毛
「白熊」と呼ばれる白いヤク毛は、チベット・ヒマラヤ地方産で、南蛮貿易や中国経由で輸入されました。入手自体が難しく、当時の日本では極めて高価な舶来品で、主な用途は以下の通り。
・武将の兜の飾り(「唐の頭」「白熊毛」「熊毛」などと呼ばれ武田信玄の諏訪法性兜、徳川家康の愛用品などが有名。)
・槍や旗の飾り、陣羽織の一部装飾。
戦国期は、ほぼ武士階級のステータスシンボルだったと伝わります。
たとえば、「家康に過ぎたるものが二つあり 唐の頭に本多平八」という本多忠勝の武功を称える狂歌の「唐の頭」は「ヤクの毛で作られた兜」のことです。
井伊美術館では、「唐の頭(彦根伊池家伝来)」の展示物が。
唐の頭というのは、南アジアに生息するヤクの尾の毛です。いわゆる南蛮渡来の珍品で、当時大変高価なものでした。その頃、まだ三河の一大名にすぎなかった家康が贅沢にすぎるこの珍品を兜の装飾品に使わせていたこと……(中略)その頃家康の軍中七人の将が唐の頭を兜になびかせていたとのことです。(井伊美術館)
また、下諏訪町立諏訪湖博物館に伝わる兜。武田信玄の『諏訪法性兜』の白い長い毛は現代の材質鑑定で「ヤクの尾毛」とされているそう。
史実では、ヤクの毛は武将の格を誇る兜に使用した素材として有名ですが、ドラマでは若い娘のお守り兼おしゃれアイテムになり、それが狩野永徳の筆になるというストーリー。
困難に遭遇しても意外と身近なところに助けがある……そんなことを思わされました。


