『べらぼう』憔悴の誰袖に笑顔が戻るも…今後訪れるさらなる悲運は史実を基にどう描かれる?【後編】:3ページ目
「許してくだりんすかねえ」と呟く誰袖にひとひらの花びらが
あまりのばかばかしい内容に、思わず笑った誰袖。
第28話「佐野世直大明神」では、白装束で髪を振り乱し、寝食を忘れるほど呪詛に全身全霊で打ち込んでいた誰袖の姿が痛々しかったのが印象的でした。
以前「「べらぼう」誰袖の叫びに重なる視聴者の怒りと涙。ついに意次・誰袖・蔦重の「敵討ち」が始まる【後編】」でも書いたのですが、やはり誰袖の呪詛の目的は、佐野や佐野の親族だけではなかったようです。
「べらぼう」誰袖の叫びに重なる視聴者の怒りと涙。ついに意次・誰袖・蔦重の「敵討ち」が始まる【後編】
意知の突然の死を受け止めきれないでいるのに、追い討ちをかけるように意知の葬列に石を投げる街の人々の「外道ぶり」に絶望する。後を追うために白装束姿で、喉を突いて死のうとしても、どうしても死に切れませんでした。
蔦重の読み聞かせで「こんな駆け落ち!フフフ!」笑った誰袖は、「死にきれなかった」と告白します。
そこで、激しく呪詛を行うことで「人を呪わば穴二つ」という言葉通り、呪詛返しが自分に返ってくることを願っていたのが切ないですね。
ひとしきり笑った誰袖は、本の話のばかばかしさに笑ったことで凍てついた心が溶けてきたのでしょう。
同時に、蔦重がこの本を作るために時間をかけてアイデアを練りクリエーターが文章を書いて絵を描き、版を作って刷り絵げて製本する、そんな手間をかけて自分のために作ってくれたそんな家族のように大切に思ってくれている温かい愛情が伝わったのでしょう。もちろん、ずっとそばにいてく面倒をみてくれていたしげ(山村紅葉)への感謝も。
「許してくだりんすかねえ、雲助様は。後すら追えぬ情けねえわっちを。」
と呟く誰袖の足元に、「もちろん許すよ」とでもいうかのように、季節外れの桜の花びらがひらひらを舞い落ちてきます。気がついた誰袖は木を見上げながら庭に降り立ち、そこに意知の存在を感じているかのようにじっと見つめます。
「許すっておっしゃってるんじゃないですか」としげ。「ああ、そんなお前だからとびきり好きだってな」と蔦重。
微笑みを浮かべた誰袖は恒例の「しげさんのお尻さわり」を復活させます。今まで心配させた謝罪の言葉を並べるよちも、いつもの誰袖らしい振る舞いをしたほうが、しげが心から安心して喜ぶだろうと知った上の行動でしょう。
皆が笑顔になったところで、花を見上げながら笑顔ながらも涙に潤んだ声で「次はいつお越しになりんす?」と言う誰袖が、切なかったですね。
きっと、いつでも意知がそこにいて見守っていてくれる……そんなことを確信したのではないでしょうか。そして、自分がどん底に落ちてもかならず掬い上げようと愛情を持って見守って助けてくれる人がいるという確信も、彼女をより強くしてくれるでしょう。


