【大河べらぼう】狂歌師・大田南畝も合格。寛政の改革で松平定信が仕掛けた『学問吟味』とはどんな試験?:2ページ目
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学問吟味の主な合格者は?
ともあれ学問吟味に及第した中には、大いに活躍した者も少なくありません。
- 遠山景晋(かげみち。金四郎景元の父)
- 大田南畝(大田直次郎。狂歌師)
- 近藤直重(重蔵。択捉探検など)
- 永井尚志(なおゆき。若年寄など)
- 堀利煕(としひろ。外国奉行など)
- 岩瀬忠震(ただなり。外国奉行など)
- 柴田剛中(たけなか。遣欧使節など)
- 森田清行(遣米使節など)
- 塚原昌義(遣米使節など)
- 山口直毅(なおき。外国奉行など)
- 内田正雄(軍艦頭など)
時代が下るにつれて外国対応の人材増員が必要となり、それで及第の門戸を広げた可能性も考えられるでしょう。
年少者向けに「素読吟味」も
文武振興は大人だけでなく、青少年にも実施されていました。
昌平坂学問所では、幕臣の子弟を対象とした素読吟味(そどくぎんみ)が行われています。
試験内容は先ほど紹介した四書五経の素読、つまりルビなしで漢文をきちんと音読できるかを試されました。
こちらも学問吟味と同じく、成績優秀者に対しては褒賞が与えられたそうです。
「ただ読むだけでしょ?そんなに難しいの?」と思うかも知れませんが、漢文をきちんと読むには、文法の丸暗記だけでは追いつきません。
日々の反復練習を通して漢文に親しみ、自分の血肉とできているかが問われ、素読を通じてその文意や精神を身に染み込ませたのでした。
終わりに
今回は寛政の改革で導入された学問吟味について紹介してきました。
狂歌師として活躍した大田南畝(四方赤良)のユーモアは、深い教養に裏づけられていたのですね。
褒賞によって文武を奨励する着眼点は悪くありませんが、問われたのはあくまで朱子学の素養であり、あまり自由闊達な思想は育まれなかったのではないでしょうか。
それでも一学を極めることにより、人材発掘に一定の効果を得られたことは間違いありません。
果たしてNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」でも、学問吟味が言及されることはあるのでしょうか。
松平定信は他にも数々の政策を打ち出しているので、また改めて紹介したいと思います。
※参考文献:
- 『教育史学会紀 第32集 日本の教育史学 教育史学会紀要』教育史学会、1989年10月
- 藤田覚『幕末から維新へ』岩波新書、2015年5月
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