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日本銀行の建物が「円」の形なのは意図的…ではなかった!建築家・辰野金吾の設計思想が生んだ偶然の産物

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おそらく偶然

まず、1891年当時、日本で使用されていた通貨単位の表記は「円」ではなく、旧字体の「圓」でした。

紙幣や公式文書では「圓」が使用されており、一般的な表記もこの旧字体が主流だったのです。

そのため、もし設計者が通貨単位を象徴しようとしたのであれば、「圓」の字形を意識する可能性が高く、現代の「円」の形状を意図的に反映したとは考えにくいです。

この点から、現在では、建物が「円」に見えるのは偶然の産物であるとする説が有力です。

また、辰野金吾は西洋の建築様式、特に英国のヴィクトリア朝建築やネオ・ルネサンス様式を取り入れつつ、実用性と美観を両立させることを重視していました。

日本銀行本店の設計では、限られた敷地内で効率的な空間配置を実現する必要があり、結果として円形に近い形状が採用された可能性があります。

これは、意図的な象徴性よりも、敷地の制約や建築上の効率性を優先した結果と考えられます。

さらに、当時は上空からの視点で建物を評価する習慣がほとんどなく、航空写真も一般的ではありませんでした。

このため、設計段階で「上から見て円形に見える」ことを意識する動機は薄かったと推測されます。

参考資料:執筆・監修阿部泉『明日話したくなるお金の歴史』清水書院、2020年
画像:Wikipedia, 日本銀行ホームページ

 

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