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桜はなぜこうも日本人の心を打つのか?日本古来からの美意識「もののあはれ」に深く響きつづける桜

桜はなぜこうも日本人の心を打つのか?日本古来からの美意識「もののあはれ」に深く響きつづける桜:2ページ目

この感性は文学にも現れています。たとえば、平安時代の歌人・在原業平は、こんな和歌を残しています。

世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし

現代語訳では「もし桜がこの世になかったなら、春はもっと穏やかに過ごせるのに」という意味になります。

桜の存在が、春を特別な季節にしてしまう――それほどまでに、桜は人々の心をかき乱すほど魅力的な存在だったのです。

桜の文化的価値とともに発展した「花見」

花見という風習もまた、こうした桜の文化的価値とともに発展してきました。もともとは貴族の遊びとして行われていたものが、江戸時代には庶民の娯楽として広まり、現在では日本全国で親しまれる季節行事となりました。

江戸幕府の八代将軍・徳川吉宗は、桜の植樹を奨励し、多くの花見名所を整備しました。これが、現代の「花見文化」の土台をつくる一因にもなっています。

このように、桜が日本人に深く愛されているのは、見た目の美しさ以上に、その背後にある歴史、文化、そして「美しさとは何か」という哲学的な問いと密接に結びついているからなのです。

桜は、ただの花ではありません。それは、日本人の「美しさのとらえ方」や「人生観」を映し出す、心の鏡のような存在なのです。

参考文献

 

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